コンビニ店員のお姉さんが姉になっちゃった

木場篤彦

第1話父からの報告

 私はどうしても姉がほしかった。

 山下家の長女に産まれて、私が産まれる以前に女の子は母親から産まれずに私だけだった。

 私は甘えられて、頼れる優しい姉がほしくてほしくて堪らなかった。

 姉が居る友人が羨ましくて、妬ましくて、こんな苦しい日々が続くのが嫌だった。

 高校生になった現在でも、姉がほしいと願い続けている。

 父親は母親の居ない家庭に徐々とやつれていき、父親との団欒は無くなっていった。

 両親は度々私の前で喧嘩を繰り広げていた。

 父親はある日、母親の頬を叩き突き飛ばした。母親は床に尻もちをついて、父親を見上げ、憎らしげに睨んでいた。そんな光景を身体を震わせながら見つめた私だった。

 私が高校から帰宅した今日、笑顔の父親に迎えられた。

「ただい——あれ?ぱ、パパ……もう帰ってたんだ?」

「おかえり、怜華っ!そうだ、今日はおまえに報告があってな。さぁさぁ、リビングにいこ!」

「どうしたの、パパ?」

 私は父親に背中を押され、リビングに脚を踏み入れ、ダイニングチェアに腰を下ろす。

「怜華、パパなぁ再婚を決めたんだ。今までろくにおまえの食事を用意出来ずにごめんな。俺は怜華を愛してる。あいつの分まで愛してる……つもりだけど、おまえには伝わってないかもしれん……不器用な俺を許してくれないか、怜華?」

「私……パパが辛いってこと、知ってるから。私は平気だよ。私、パパのことが好きだよ……パパ、おめでとう」

「あぁああっ、ありがと怜華ぁあ〜ああ!!ごめんなぁ……俺ぁ自分のことばっかで、怜華のことぉ支えられなくて……ごめん、ごめんな怜華ぁぁああぁあ……うぅっうゔぐっ」

 父親がダイニングテーブルについた手の、手の甲に私が手を重ねると、父親が流した涙がぼろぼろと落ちてきた。

 父親は号泣し、嗚咽を漏らしながら、私に謝った。


 父親が泣き止み、落ち着いてから、再婚相手について訊く私。

「——で、明日ご挨拶に伺いたいってことだから早く帰ってきてくれないか、怜華」

「そうなんだ。うん、明日は早く帰ってくる」

「悪いな、怜華。そういうことで、この話はこのくらいで……飯にするか」

「うん」

 父親がキッチンから戻ってきて、弁当屋の弁当を二人で食べた。


 私は23時には就寝した。

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