この世界は俺に対して優遇しすぎてる気がする。
紗倉 伊織
第1話
22歳、高卒、運送会社で働き始めて4年目。
別になんてことはないよくいる人だろう。
趣味特技は剣道、ボクシング。
そんなよくいる人だった。
ついさっきまでは。
端的に言うと、会社の車庫で上司のトラックにペちゃってやられた。
洗車してたら俺のトラックに突っ込んできてて気付いた時にはサンドイッチ。
しっかり痛かったし、身体もあらぬ方向に曲がってた。
なんでこんなくだらない話をしてるかと言うと。
「んで、心の整理は落ち着いた?」
「いや全然、飲み行く予定の人にミンチにされて落ち着けるわけないでしょう」
「そっかなぁ?まぁそんなもんなのかー」
死んだのにちゃぶ台挟んで女の人と話しているからですよ。
うん。どういうことなの。
「え、死んだんですよね?俺って」
「うん、もちろん。清人くんは死んでるよん」
「じゃあなんで会話出来てるんですかね、ちゃぶ台挟んで」
「そこはまぁほら、さすがに可哀想すぎたしね…普段人っ子一人にこんなことしないけどその状況見せられたらさすがに…ねぇ?」
「そんなもんなんですね…」
うーん考えるのやめた。考えるだけ頭痛くなる。
「死んだらどうなるんですか?」
「まぁ普通は行い見て天国か地獄かって選ぶんだけど時々こういうふうな感じのことはするよ」
「へー、やっぱそこはそんな感じなんですね」
「そうそう、まぁ天国なんてやることないこともないけど生きてる時より娯楽は無いし、地獄はただひたすら苦痛だよ」
今から行くであろう所の情報を知った上で言うけど夢が無さすぎる。あまりにも悲しすぎる。
「ちなみに俺はどっちに行くんです?」
「いやー、ちょっとさすがに…ね?別に悪いこと大してしてないから普通は天国だけど可哀想がすぎると言うか…」
「そのレベル…?でもほら、若くして不治の病とかって人は…」
「そこはもっかい地球に戻ってもらってるよ、基本記憶とかは消してるけどね。あ、そうだ!君ファンタジー物とか好き?」
「ラノベとかの?」
そう聞くと女の人はニッコリして言った。
「そうそう!私その手の好きなんだよねー!行ってみない?」
「面白そうですねそれ」
めっちゃ好き。ボクシングとかの合間に読んだりするけどワクワク感半端ない。
まじで考えた人天才だろ。
「そうとなれば善は急げ!」
「ん?お?え?」
何を言い出したんだこの人。
目の前真っ白になった。
ちゃぶ台は!?
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