第12話
あの後もサファルティアはアリアロスと相談という形をとりながら会話をいくつかし、解散となった。
その報告が上がったのは、その日の夕方だった。
「国王暗殺計画、ね……。で、次の王はお飾り王の僕ですか」
「ふむ、意外と大胆な計画だな」
サファルティアの後ろからシャーロットが顔を覗かせる。
「うわっ! お、驚かせないでください、陛下!」
「何度も声をかけたが? まぁ、お前は私なんかよりそっちの紙のほうに夢中だったみたいだが」
拗ねたようなシャーロットの表情に苦笑して、サファルティアは「おかえりなさい」と言いながら頬にキスをする。
「まったく、それで私の機嫌を取ろうとなど……」
「だめですか?」
しゅんとした表情をして見せれば、シャーロットは「っ、この小悪魔め!」と言いながら頬を染める。
「それで、私の可愛いサフィは、私よりも気にかけているものはなんだ?」
「マーシャル公爵の今後のプランです」
昼のこともあり、サファルティア付きの兵士にアリアロス・マーシャルの周囲を調べさせたところ、国王の暗殺計画が持ち上がっていることが浮上した。
その間にマーシャル家から1億モーブ程の金が動いていることがわかり、昼の食事会でアロアリスが不穏なことを言っていたことから、何かあると踏んで調べれば案の定といったところだ。
アリアロス本人でなくとも、その家人や使用人の動きを追っていれば、あまり品性を感じさせない連中と接触し、金銭的な何かをやり取りしている現場を押さえた。当然ながら身分の低い使用人には目的など知らされることなどなく、ただ上司からこれを持っていくようにとお使いを頼まれただけだという。
その使用人は文字が読めず、中身すらも知らないとのことで、しばらく泳がせてみることにした。
「しかし、だとすれば随分と杜撰なプランだな」
「まだ初期段階なのかもしれません。このまま受け身になって様子を見てもいいですが、逆手に取るのもありかもしれませんね」
「また無茶なことを考えているわけではないだろうな?」
「無茶かどうかはわかりませんが、マーシャル公爵の狙いが陛下で、ティルスディアを侮っているのであれば多少は有利に働くんじゃないかと」
「なるほど、こちらから仕掛けてみるのか」
「ええ」
シャーロットは悪戯っ子のように笑い、サファルティアにキスをする。
「! もう、なんなんですか急に……」
「いや、私のサフィは時々悪いことを考えると思ってな」
「僕以上に悪い人なんていっぱいいますよ。何より、陛下の暗殺は見過ごせません」
例えば、これが自分やオルガーナ、アドリーに向けられたものなら、サファルティアは何もしなかっただろう。せいぜい相手に忠告してやるくらいだが、シャーロットであれば別だ。
「大切な僕のシャーリーに手を出そうとするんですから、それ相応の報いを受けていただかなくては」
ぞっとするようなサファルティアの声と台詞に、シャーロットはくすりと笑う。
「サフィのそういう過激なところも、惚れ直すな」
「ありがとうございます」
「それで、何か策はあるのか?」
「そうですね。一応考えてはいます」
「なら、後で聞かせてもらおうか」
「もちろんです」
ひとまず相手の目的も計画も見えてきたので、これから早速準備を、とサファルティアが動き出そうとすると、シャーロットに引き留められる。
「陛下?」
きょとりと無防備に首をかしげるサファルティアに、シャーロットは口づける。
「ん……ふぁ……」
触れるだけのものから徐々に深いものへと変わり、サファルティアは次第に立っていられなくなる。
「ちょ、陛下……まだ、仕事が……ひぁっ……」
「可愛いな、私のサフィ。だが、今日は仕事はお終いだ」
「いや、です……」
サファルティアがシャーロットを押しのけようとするが、逆に抱き込まれてしまう。
「ていうか、僕の部屋から陛下が出ていかないのは不自然では?」
「私とお前の仲だろう」
「毎晩のようにティルスディアの部屋に行っていて、突然僕のところに来るって変だと思いませんか?」
「サフィよ、固いことを言うな。たまには兄弟水入らずで添い寝と行こうではないか」
「毎日してるでしょうが! ひゃっ!」
カプリと耳殻を食まれ、耳の中を舌で擽られるとサファルティアはびくりと震える。
「あまりわがままを言うと、私も考えねばならないが?」
「や、耳、弱いの知って……」
震えるサファルティアを抱き上げ、ベッドへ運ぶ。
「1か月ほど我慢していたんだ。久しぶりに私を甘やかしてくれ」
真上から見下ろされ、欲情した目で見られるときゅんとして、心臓がドキドキする。
まだ夕飯食べてないとか、湯浴みしてないとか、仕事のこととか、いろいろ言いたいことはあったけれど、好きな人に甘えてもらえるのはやっぱり嬉しくて、許したくなる。
「~~っ! 今夜だけですからね」
顔を真っ赤にして抱き着いてくるサファルティアが可愛くて、シャーロットも胸が高鳴る。
「ふふ、本当に、私のサフィは愛らしい」
互いに求められるままにキスをして、どちらが甘やかされているのかもわからないほどドロドロに溶かされて、甘い夜は過ぎていった。
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