第4話

 床下から這い出したカガネは、静まり返った部屋の中、母の冷たい体に寄り添った。血の臭いが鼻を刺し、目の前の現実を否応なく突きつけてきた。彼の小さな手が母の冷えた手を握るが、彼女はもう答えない。


 幼い心には耐えがたい痛みが渦巻き、カガネは何もかもを憎み始めた。家族を奪った連中、その背後にいる者たち、すべてを。


 幼いながらも、母の死が理不尽であることだけは理解できた。自分はただ守られるだけの存在ではもういられない。母の無念を晴らすために強くなる必要がある、そう感じた。


 侵入者たちはあくまで母の殺害だけが目的だったようで、金庫などは荒らされていなかった。家族の遺産を生きるために細々と使っていくのか、力を手に入れるために使うべきか、答えは明白だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る