サイバネ侍と忍者ハッカー

青猫あずき

第1話

 ネオンの光が無数に散りばめられた羽佐間ハザマ市の夜空の下、カガネはメガコーポの研究所に身を潜めていた。周囲の影と一体化するように静寂を保つ。彼の耳に、相棒フロストバイトの冷静な声が通信リンク越しに響く。


「セキュリティカメラを一時的にシャットダウンしたわ。左の廊下を直進して。」


 カガネは施設内へ忍び込み、フロストバイトが巧妙に制御する映像に合わせて進路を取った。施設の警備員たちは気づく間もなくカガネの不意打ちを受け、地に伏していく。


「もうすぐデータ保管庫だよ。中に入ったら、鏡影メモリを使ってデータを盗み出して」


 カガネは扉の前で待機した。フロストバイトがセキュリティを解除し始めると、不穏な電子音が響き始めた。


 フロストバイトは冷静に、データ保管庫のロック解除を試み、次々とシステムを突破していく。


 ようやく目的の部屋の扉が開くと同時に、アラートが施設全体に響き渡る。


「急いで、エリート企業戦士が来るわ!」


 カガネは部屋に入りフロストバイトから託された鏡影メモリを部屋のコンピュータへ差し込み、データのコピーを始める。


 さらに脳内にインプラントした剣術AI『五輪の書』を起動させ、扉の前に立つ。

 かけつけてきたエリート企業戦士たちはカガネに銃を向け投降を促すがカガネは聞き入れず、腰に差した二本の単分子ブレードを抜いた。


 企業戦士たちが発砲しようとする銃器を弾道予測プログラムが補足し、弾道をAR画像として視覚情報に反映する。

 銃弾をすべて回避し、サイバネ義肢の膂力で振られた単分子ブレードが企業戦士たちを切り裂き、行動不能に追い込む。


 カガネは鏡影メモリが研究データの複製を終えたのを確認し、メモリを回収するとその場を離れた。


 フロストバイトはアジトからエレベーターを操作し、ドアを次々と開閉させながら、カガネをスムーズに脱出ルートに導いた。

 ビルを抜け出し、都市の夜風を浴びた瞬間、フロストバイトが通信越しに「任務完了」と告げる。カガネは頷きながら低く呟いた。


「また一歩、目的ふくしゅうに近づいた」

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