拾った卵

口羽龍

拾った卵

 栄太は今日の仕事を終えて自宅に向かっていた。東京に来て10年、なかなか恋に恵まれないものの、仕事を一生懸命頑張っていた。頑張っていれば、きっといい出会いが待っているに違いない。そして、幸せになれるだろうと思っていた。だが、仕事ばっかりで家庭の事を考えない自分にそんなチャンスはあるのかと疑ってしまう。


「今日も疲れたなー」


 栄太はぐったりとしていた。今日も疲れた。だけど、明日も仕事だ。しっかりと疲れを取って、明日に備えよう。そうしなければ、明日の仕事で全力を出せないだろう。


「早く帰ってゲームをしよう」


 栄太はテレビゲームが好きで、よくやっている。だが、ゲームは時間を決めてやっていて、やりすぎないのを大切にしている。


 と、栄太は道端である卵を見つけた。その卵は虹色で、とても美しい。まるでイースターエッグのようだ。思わず見とれてしまう。


「あれっ、これは?」


 栄太は立ち止まり、その卵をじっと見ていた。この卵は何だろう。普通の卵に誰かが絵を描いたんだろうか? それとも、何か得体のしれない動物の卵だろうか?


「この卵、何だろう」


 栄太は考えた。拾ってみて、育ててみよう。きっといいことがあるに違いない。すばらしい出会いがあるに違いない。


「拾ってみるか」


 栄太は拾って、あたりを見渡した。周りには誰もいない。大丈夫だ。栄太は警戒していた。誰かが見ていて、その卵を奪い返そうと思っていないだろうか?


「何もいないよな・・・」


 誰もいないと感じ、栄太はほっとした。ビニール袋にくるみ、リュックに入れた。


「さてと、帰ろう」


 栄太は自宅に向かって再び歩き出した。自宅まではあと10分だ。そんなに遠くない。あとちょっとで自宅でゆっくりできる。そう思うと、足取りが軽くなる。


 と、栄太は何かの気配を感じ、振り向いた。だが、そこには誰もいない。ひょっとして、その卵を拾ったから狙われたのでは? いや、誰もいない。そんなわけない。栄太は再び前を向き、自宅に向かって歩き出した。




 栄太は自宅に帰ってきた。栄太は自宅の明かりをつけた。栄太の自宅は1部屋で、その部屋も決して広くない。


「はぁ・・・、帰った帰った」


 栄太はリュックを床に置き、ベッドに横になった。とても疲れた。しっかりと体を休めよう。栄太はリュックから卵を取り出した。栄太は卵を眺めている。


「うーん、何だろうこの卵」


 栄太は首をかしげた。誰か描いたと思えない。色が手に付かないからだ。だとすると、これは卵の模様だ。でも、この卵は何の卵だろう。


「育ててみるか」


 栄太はこの卵をかえそうと考えた。きっとすごい動物が生まれてくるに違いない。それを育てて、自慢してやる! そして俺は大金持ちになるんだ。


「本当に何だろう」


 ふと考えた。この卵が怪獣の卵だったらどうしよう。ならば、怒った母がやってきて、食われるかもしれない。いや、そんなわけない。この世界の怪獣なんていない。それは映画だけの話じゃないか。


「うーん・・・」


 ふと、栄太は立ち上がり、窓を開けた。だが、そこには何にもいない。広がるのはいつもの東京に街並みだ。


「あれっ!?」


 栄太は明らかにおかしいと感じていた。この卵を拾ってからの事、何かの気配を感じる。帰り道でも感じた。いったい何だろう。全くわからない。


「誰もいないな・・・」


 栄太は横になり、再び卵を見た。この卵の中には、何の赤ちゃんがいるんだろう。赤ちゃんはきっとかわいいんだろうな。子供の頃から育てれば、きっと自分にもなつくんじゃないかな?


「本当にこの卵、何だろう」


 栄太は眠気を感じた。ちょっと寝よう。晩ごはんはそれからだ。


「ちょっと寝よう」


 栄太は目を閉じた。それから間もなくして、栄太は夢を見た。そこは草原だ。まるでファンタジー世界のような場所だ。


「あれっ、ここは?」


 栄太は周りをキョロキョロした。どうしてここにくる夢を見ているんだろう。


「ギャオー!」


 その声に反応して、栄太は振り向いた。そこには緑の怪獣がいる。えっ、ここは異世界? 栄太は戸惑っている。


「か、怪獣?」


 怪獣の後ろには、今さっき拾った虹色の卵がある。まさか、あの卵は怪獣の卵だろうか? 戸惑っている間にも、怪獣は栄太に向かってくる。怪獣はよだれを垂らしている。明らかに栄太を狙っている。


「やめて! やめて!」


 怪獣は栄太にかみついた。栄太は喉元を嚙みつかれた。


「ギャー!」


 栄太は一瞬で意識を失った。と、ここで夢から覚めた。


「ゆ、夢か・・・」


 栄太は戸惑っている。その横には、あの卵がある。抱いて寝ていたのに、横にあるとは。まさか、寝ている途中で離したのかな?


「あの卵、まさか怪獣の?」


 栄太は夢の内容が気になった。まさか、これはあの怪獣の卵? いや、そんなわけない。これは夢だけの話。現実でそんなのはいない。


「いや、そんなわけないよな。この世に怪獣なんていないよな」


 栄太は時計を見た。そろそろ晩ごはんを買ってこないと。


「さてと、晩ごはん買ってくるか」


 栄太は晩ごはんを買いに行く事にした。部屋の明かりを消して、鍵をして、栄太はコンビニに向かった。すでに買うものは決めてある。早く買ってきて、早く食べないと。


 栄太はコンビニに向かって歩き出した。その時、何かの気配を感じて、栄太は振り向いた。


「えっ!?」


 だが、そこには誰もいない。またもや誰もいない。もう何度目だろう。何度そんな気配を感じたんだろう。もうやめてくれ。


「うーん、いないなー」


 栄太は首をかしげた。あの卵を拾っただけで、こんな夢を見たり、誰かの気配を感じるなんて。明らかにおかしいな。


「おかしいなー」


 栄太はコンビニに向かった。だが、栄太は気が付いていなかった。その後ろに緑の怪獣がいるのを。


 20分後、栄太はコンビニから戻ってきた。栄太は即席ラーメンを買ってきた。鍵を開け、部屋に入り、電気をつける。いつもの夜だ。だが、あの卵のおかげで、新鮮に感じる。


「さて、今日もネットサーフィンするか」


 栄太はパソコンをつけた。いつものようにネットサーフィンをするつもりだ。完全に起動する間、栄太はお湯を沸かしに行った。


 しばらくネットサーフィンをしていると、お湯が沸騰した。栄太は即席めんに注ぎ、ふたをした。あとは3分待つだけ、ちょっと待とう。


 3分後、即席めんができた。栄太はふたを開け、即席めんを少し混ぜた。


「さて、食べよっと」


 栄太は即席めんを食べ始めた。その横には、拾ってきた卵がある。栄太はそれを見つめつつ、箸を進めた。


「きれいな卵だなー」


 栄太は再び即席めんに目をやり、食べ始めた。栄太はインターネットで動画を見ている。その動画は面白い。思わず見入ってしまう。


 突然、何かの気配を感じ、栄太は横を向いた。すると、置いてあったはずの卵がない。どこに行ったんだろう。


「あれっ!?」


 栄太は首をかしげた。一瞬のうちに誰かが持って行ったんだろうか?


「あの卵、どこに行ったんだろう」


 と、栄太は何かの気配を感じて、振り向いた。そこには夢で見た緑の怪獣がいる。まさか、本当にあの怪獣の卵だったとは。気づいてももう遅い、怪獣は栄太に向かってくる。明らかに栄太を狙っている。


「えっ!?」


 怪獣は雄たけびを上げ、栄太にかみついた。


「ギャー!」


 栄太は喉元をかまれて、即死だった。




 翌日、栄太が会社に来ないと感じた同僚がやって来た。いつも仕事に来ているはずの栄太が、今日は来ない。明らかにおかしい。何だろう。


「おーい、栄太ー、仕事だぞー」


 同僚は大家からもらったマスターキーを使って、部屋に入った。


「あれっ、いない・・・」


 だが、そこには栄太がいない。失踪したんだろうか? 同僚は戸惑っている。


「栄太!」


 同僚は声を上げた。だが、栄太の声は聞こえない。同僚は驚きを隠せない。突然栄太が失踪するとは。


 と、同僚はベッドに着いた赤いシミを見つけた。


「えっ、血のり?」


 これは、栄太の血だろうか? まさか、栄太は殺された? 同僚はゾクッとなった。


 だが、同僚はまったく気づいていない。その様子を、怪獣が見ていて、同僚を食べようと狙っているのを。

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