異世界がゾンビで溢れかえった

犬小屋

地球の終わり

第1話 001

 2025年春、スマホから地下や建物に避難するように警告が発せられると同時に、全てが染まるほど強い光が降り注いだ。

 音さえ届く前に僕の体は死の光りに包まれ17年の人生に幕を閉じたんだと思う。まぁ死んだことないしね。おそらくは核戦争という自爆の犠牲者になったのだが、痛いと感じる暇さえなかったのは幸いだ。・・・そして、人類のほとんどは、僕と同じ運命を辿っただろう。短すぎる人生で振り返ることがないからなのか、僕の走馬灯は・・・・あぁぁ眠くなってきた。


・・

・・・


「・・・起きろ。」


 微かに声を聴いたと思った直後に叩き腹あたりに衝撃が走り飛び起きた。僕を待っていたのは、真っ白な部屋、それと白髪に白いローブ、木の杖を掲げた絵にかいたような神様的な恰好で逆に怪しいくらいの爺さんだ。あぁ、ここが天国なのかできればかわいい天使に担当してほしかった・・・。


「少年よ。お前は、死んだのじゃ、じゃが運がよかった。本日は、異世界サービスDayとなっていてな。死んだ者は皆、異世界に転生できるというわけじゃ。わしの事は神様とでも呼んでくれれば良いぞ。」


 か、神様?


「そうじゃよ。」


 目の前にいる、あやしい爺さんは、神を名乗り僕を天国や地獄ではなく異世界へといざなってくれるということなのだが、ご都合通りであまりにも都合がよすぎてあやしい気すらする。


「うむ。少年にひとつ教えて進ぜよう。天国や地獄なんてもんは無いぞ、普通は死んだらそこでおしまいじゃ。そもそも死んで脳内の信号が途切れれば、考えたり話すことなんぞできんからな。だが、異世界はあるのじゃよ。」

「・・・。」

「まぁ良い。後ろを見よ。」


 先ほど僕の腹をぶったたいたであろう杖で僕の後方が指示された・・・人、人、人、数えきれない程の人がひしめいていた。


「どういうわけかわからんが、今日は、Fever状態でなんじゃよ。おぬしばかりにかまってられんって事じゃな。」


 そういった直後に、爺さんの姿が消えた、『ガガァ』とスピーカーのスイッチを入れた直後の音が鳴ると轟音が鳴り響いた。


「注目じゃ、静粛にするのじゃ。今から色々と説明する。わしの言うことを聞けん奴は異世界に行く資格をはく奪といったところじゃな。・・・もちろん死んでもらうって事じゃよ。」


 突然沸いたように空中に浮いた巨大な映像に先ほどのじい・・・神様が現れて結構恐ろしいことを言い放ちそのおかげか、思ったよりも静まっていった。


「まぁこんなものじゃろう。」


 映像からカットテープが舞い上がると『ぱんぱかぱ~ん』と音がしてどう考えてもメモを見ている神様が語りだす。


「初めに、おめでとうじゃ。諸君はめでたい異世界サービスDayのこの日にこの世界以外で死ねた運よ良い人間たちだ。そして諸君には、これから異世界での新しい生活が待っているだろう。」


 神様が杖を掲げると、カットが変わりおそらく異世界なんだろう映像が流れ始める。島の上空の映像からアップしていき異世界の人々の生活や、どうあがいても人間じゃ相手にならなそうな怪物たちを討伐している金髪のサムライ?が映し出されるなど・・・そう、まるでゲームの紹介PVのようだった。


「この世界では、自由じゃ。侵略を行おうが、魔物を調教して魔王を名乗ろうが、一般市民になって普通に生活するのもよいだろう。本当はやってほしいこともあるのじゃが、強制感が生まれてもつまらんからの・・・。じゃがわしのして欲しい事を達成したものにはお前たちの世界でいうチート能力とこの世界で城が買えるほどの通貨を与えるつもりじゃ。」


 その話を聞いて少しざわざわし始める。


「・・・この話を聞いてもかなりの人数が元の世界への帰還を願っているようじゃから、向こうがどうなっているのかを教えよう、あちらの人間は、もうすぐ絶滅するじゃろう。自分たちが作った武器で全滅なんて面白い種族じゃな。あの武器が使われてから4日後なのじゃが残り23万ほどじゃな。それでもかまわないならわしのして欲しい事を達成した者、それを手伝った者も元の世界への帰還を認めてもよいじゃろう。じゃがそこでは既に死んでいるという事を忘れん事じゃ。」


「まぁ、長くなってもつまらんじゃろう。それにまだまだ異世界へ来る者たちがいるのじゃ。質問がなければ適当に異世界へって事でよいじゃろうか?」


 思ったより大人っしかった面々が質疑応答の間になるともう知っちゃかめっちゃかなくらいに個々が叫びだした。


「待つのじゃ。質問は、心の中で思えば良い。だが答える価値のないものは、答えんつもりじゃ。」


・・・


 しばらくざわざわした時間が流れると神様が、「静かにと」いう一声でまた映像が注目された。


「色々、あるのじゃが3つの質問だけ答えることにしたのじゃ、後のことを勝手にせい。」


 そんな切り口で語られた1つ目は、やって欲しい事の事だ。難しいことで異世界での事がわからないうちに達成できる事は、不可能と考えているようである程度異世界での力や権力を持ったものだけに伝えるとの事だった。 

 次に語られたのは、言語の事だ。この世界では、基本的に魔法で難しい事を全て解決できる世界なのでそういう事は考えなくとも問題ないと言われてわけがわからなかった。

 ・・・最後は、異世界と言ったら魔法とスキルの事だろう・・・もちろんあるのだ、本物の魔法使いはこの10万年前くらい前に数百人ほどいただけいう事だが、今の世界は本物の魔法使いから恩恵をもらう、仮の魔法使いみたいなものとなるらしい。なんでも世界中に散らばっている碑石に触るだけで対応した魔法が身に付き使う事が出来るのだ。魔法理論事態は、既に消失しているようで再現することはおそらく無理だろうという事だ。


 そして、「長くなってすまんかったの。」と唐突に言い放った神様が杖を掲げると僕の意識は遠のいて行った。

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