第1話を読みたくて

沼津平成

第1話(←ついに読めた!)

「作品に恋した女」

 

 私は中学生の小説書き。本名武市たけいちミヤは、あることに奮闘している。

             *


 友達が遊びに来ている時間も、このために私は奮闘している。走れ! 私! って、なぜ走ってんだ私? ふっと立ち止まって私は自分を見つめる。ちょうど2年前、私が考察していたときだ。



 第1話を読みたくて、私はどれだけ走り続けてきただろう。

 幼稚園童話作家、春風イクくんと、出雲ソラくん。この2人がタッグを組んだ「いずそら」名義で「はじまりのものがたり」が発売された。SWIM社の本で、本編は14頁だ。しかしそれぞれの代表作が入っているため、本としては70頁弱はあるらしい。

 私はずっと――これが読みたかった。

 しかし、のりで貼り合わせてあるのか肝心の本編が読めない。本編を読もうとすると過去に戻されてしまうのだ。


――それも、2年くらい前に。


 私はずっとこれを何周もしてきた。


 そして、ついに見えたのは、白紙だった。

 2歳の私は、


            *

……2年後。

 春風イクくんは小学校に入学した。

 そのときからなぜか、見えなかった本編が読めるようになった。

 架空の2年間。二人はある作品を執筆していたという。

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