陰陽師上憑は今日も企んだ

「先生終わりましたよ。先生おーい大丈夫ですか?」


 はっあまりのできごとに意識をとばしていたようだ。


「ああ大丈夫いや腰を抜かしてしまったようだ手を貸してくれないか?」


「はい喜んで、じゃあお姫様抱っこで外まで連れていきますね」


「ちょちょっと待て大の大人がそんなことをされては面目が立たん手を貸すだけで良い」


「いいえ、問答無用です。」


 お姫様抱っこで何時の間にか元に戻っていたエレベーターに乗りビルの一階に運ばれてしまった。だが抱っこされている間ほとんど揺れもふらつきもなく運ばれたことになんだか安心感に包まれていたのは否めない。


「ああもう歩けるからいい加減降ろせ」


「はいはい」


「なんだその返事は学校の教師に向ける言葉ではないぞ」


 お姫様抱っこから解放されることに少し名残惜しさを感じながら優しく地面に降ろされる。


「であれは何なんだ?」


「あれってどれのことです」


 確かに漠然としすぎた質問だったな、聞くことが多すぎる一度整理してみるか。

時系列を辿りながら質問してみるか。


「じゃあまずはあの6階のことだあんな階このビルにはなかったはずだぞ」


「ああ、あれは異界ですよ都市伝説とか神話の神様連中とかがああいう自分の空間もってることがあるんですよね。うーん例えば神道の死者の世界である黄泉やクトゥルフ神話のドリームランド、外宇宙みたいな場所ですかね。そういうのがこの地球の次元に重なるように存在してるですよ。」


「神様だそんなものが実在するのか」


「妖怪がいるんだから神様も当然存在しますよ。うちの一族の家にある神社には豊穣の神様である啜り様が実際にいますしね。」


「はあああ!家に神がいるだと!!」


「え、はい居ますよ昔から何なら奈良時代からいるらしいですから啜り様」


「深堀したいがやめておこう本筋から話がずれそうだ。つぎだ異界とはなんだ」


「異界ですか。説明難しいんですけどいうなれば地球とは違う法則が支配する、神様や妖怪の固有の世界です。黄泉ならば死者が生者同様に暮らしています。今回の異界だと調べさせたとこ廊下が無限に続いていたみたいですね。」


「調べさせたといったな集団でこういうことをやっているのか」


「うちの家無駄に長い歴史ありますからね、分家とか下部組織とかもだいぶ先代の時代から縮小してますけど残ってるんですよ」


「おまえ結構偉い立場にいるのか?」


「はい。この地域一帯の退魔組織の頂点に上憑家がありますからそこの当主で僕ある僕はそれはそれは偉いんですよ。まあ本家の人間は僕と兄しか残ってませんけどね」


「ほかの親族はどうした、父親や母親は?」


「もう濁して話したのにそういうデリカシーないとこ直したほうがいいですよ。母親は死にました、父親は行方不明で父型の祖父母は妖怪に殺されたらしいです」


「それはすまなかったな」


「謝らないでくださいよそんなところも好きなんですから、気にしないでください」 


「この話はやめだ、妖怪てけてけと言っていたなあの上半身だけの女はなんだ」


「話題の変え方下手ですね~先生、あれは妖怪やら幽霊の一種ですね。今回のてけてけの場合だと噂話から力を得て具現化したんじゃないですかね。」


「噂話から生まれただと!」


「ええ、生きた人間はだれしも認識し、信じることで人間以外のものを生み出したり力を与えたりできるんです。まあ個人でその力に大小はありますが多くの人が信じればさっきのてけてけのような妖怪や異界が生まれます」


「それではSNSなどはどうなるあんなもので妖怪の情報や噂話が広まればそれだけ多くの妖怪が生まれるのだろう」


「理解早いですね。その通りです、情報伝達手段の発展、本から始まり新聞、テレビ、SNSこれらの進歩によってこの方法で生まれる妖怪の数は段違いに増していったのだと聞きます」


「お前たち退魔組織とやらはそれに対処しきれているのか」


「昔の日本は大騒ぎだったらしいですよ。東京中心の大規模な退魔組織の力は衰え地方の退魔組織が台頭し始めるほどには。まあほかにもGHQの干渉やら陰陽寮の解体特に天皇の人間宣言やらが重なったのが大きな原因らしいですが、いまは落ち着いてますから安心してください。まあ生まれる数が増したといってもあの程度の雑魚が多いですしあの程度じゃ自分の異界から出ただけで消滅しますしね」


「さっき神がいると言っていたな神連中はそんな大変な時期に助けてはくれなかったのか?」


「神様は地方信仰の土地神系は別としてもっと大きい日本規模、世界規模の危機に対処しててあんま余裕ないですから、干渉なんて滅多にしてきませんよ」


「今回の場合といっていたなではほかにも妖怪が生まれる方法があるというのか」


「それはいっぱいありすぎるんで次の機会で一番知っていてほしい生まれ方は話したんのではい次の質問に行きましょう」


「はぁお前なぁ。まあいいかあの血鏡と呼んでいたものと瑠璃と呼んでいた犬の頭の化け物はなんだ」


「嗚呼あれは僕の術ですよ、血鏡その名の通り僕の血でできた鏡です。形状も出現場所も自由自在、物や生物なんでも出し入れ可能で限界なんてないまさに底なし沼でも僕の血でできているから内部は呪詛であふれてるので生物なんか入れた日には即死ですけどね。あと取り込んだものを式神にする機能もありますよ、どっちかというと後者のために作った術式ですしね。瑠璃は見せたほうが早いかなおいで」


 そういうと血鏡が展開され瑠璃が浮かぶように現れた。この人通りが少ないとは決して言えないビル内でだ私はとっさに叫んでいた。


「ばっなにを考えているこんなところでそんなものを出していいはずがないだろう」


「周りを見てください、先生の叫び声のほうが注目を集めているぐらいですよ」


 周囲を見回してみる確かに私たちに注目は集まっているが巨大な犬の頭が浮いているというのに周囲の人間は誰も瑠璃の方を向いていない。


「どうなっている誰も瑠璃の方を向いていないぞ」


「みんなには見えてないんですよ、妖怪、幽霊は見る才能がないと基本見えませんから」


「ならなぜ私には見えている」


「先生は異界に行ったでしょ。そういう経験をするとなぜか後天的に見えるようになるんですよね。」


「お前それを分かっていて連れ込んだのか私を」


「はい。僕の見ている世界を知って欲しかったですから先生だけの特別サービスですよ」


「なにが特別サービスだ、いつまで見え続けるんだこれは」


「一生です。見えたものが見えなくなったなんて聞いたことないですから」


「見えることでデメリットは」


「妖怪に襲われやすくなったり、無意識に異界に入りやすくなったりしますかね」


「もう一度聞こうそれを知ってて私を連れ込んだな」


 上憑は満面の笑顔で元気よく返事をする。


「はい」


 私はその言葉を聞くと同時に拳骨をその頭に落としていた。


「痛い、痛いですよ先生、何するんですか」


「私のセリフだお前気軽に私の人生を変えるようなことをするな」


「でも先生は見えたほうが安全ですよ?」


「なぜだ」


「だって僕先生のこと好きですから」


「それとこれに何の関係がある」


「中学の頃いろんなヤンチャしたんで僕、近しい人間は人外に人質にされる危険があるんです。だから学校ではだれとも親しくならないようにしてたのに先生がいけないんですよ、 優しくして時には叱ってくれてこの一か月足らずで心の奥底まで踏み込んでくるからそんなだから」


 上憑の目に怪しい光が宿り始める黒金剛石のような瞳から目が離せなくなっていく私の頬に両手が添えられ顔が近づいてくる。




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