神の生贄 上憑くん
ガラク
てけてけ
「起きろ
体が揺さぶられている感覚がある...ああいい揺れ具合だゆりかごのように
心地いい揺れにもっと深く眠りに落ちていく。
「起きろといっとろうが」
痛い...顔をあげてみれば茶髪のポニーテールにかっちりとスーツを着こなした美女担任の優香先生が顔を怒りの形相に染めていた。見れば手のひらをひらひらと振っている。頭をはたかれたのだろう。僕はごまかすようにおどけるように言う。
「もう、体罰ですよ先生僕以外の生徒さんにそんなことしちゃだめなんですからね。」
「お前はほんとに呑気な奴だな今が何限目かわかっているのか」
「え...2時限目くらいですか?」
「帰りのホームルームだ馬鹿者、先生方から聞いたぞお前1限目から寝ていたらしいな」
「あはは...ごめんなさい。」
「はあ次は気をつけろよ、3組の帰りのホームルームは終わりだ全員帰るなり部活に行くなり好きにしろ、解散」
教室にいた生徒たちがぞろぞろと帰る準備をし始め、先生は教室を出ていった。
後ろから肩に手を置かれる。ボッチの僕にかまうのは、どうせ彼だろう僕は椅子ごと振り向いて喋りだす。
「ホームルーム前には起こしてよ」
やはりそこにいたのは赤い髪に制服を着崩したチャラついた格好をした僕より身長が3cmも高い173もありやがるワイルド風イケメンの
「いや~あんまりにも気持ちよさそうに寝てたからよ、起こすのもかわいそうな気がしてな。てか
「この進学校の来善で高1にもなってヤンキー感醸し出してる新もどうかと思うけどね。」
「おっ俺のことはいいだろ。とっそんなことで声かけたわけじゃねえんだよ、彼方が寝てるあいだに面白いこと聞いてよ、2組にめちゃくちゃ綺麗な転校生が入ったんだとおれはまだ見てないんだけどよ、まだ帰ってないだろうからさ一緒に拝みに行こうぜ」
「もしかして僕と二人で見に行きたかったからまだ見に行ってないの」
「なんか青春ぽいだろうがそういうのしたかったんだよ、悪いか!」
「ふふ僕も待っててくれてうれしいよ、でもごめんね今日はパス今から妖怪退治のお仕事だから」
すぐ新の顔が引き締まって精悍な男の戦う表情に変わった。
「俺が着いて行ってもいい案件か?」
「今回はダーメ依頼人さんの孫娘さんが依頼人さんが騙されてるんじゃないかと疑って退治に同行するって言ってるらしくてさ二人も面倒見てられないのさ」
「お前がよく許可したなそんなこと、危ないだろ」
「怪異は低級も低級だって調べはついてるし孫娘さんの写真みたら知り合いだったからさサービスさサービスじゃね僕行くから。」
席の横に引っ掛けていた鞄をとってさよならの手を振りながら僕はこう言った。
「転校生は明日一緒に見に行こうね、抜けがけするなよ~」
◇
常吉おじいちゃんは何を考えているんだ。うちのテナントビルで幽霊騒ぎが出ているとはいえ陰陽師だか霊能者だがしらんがそんな怪しげな奴を頼ろうなどと、ストレスでまいっているに違いないこの私が正体を暴いてやる。
「先生、優香先生おーい聞こえてますかー」
「おお上憑ではないか」
前を見ると担任のクラスの生徒上憑が目の前に来ていた考えごとに夢中になって近づいてきていたことに気づかなかったようだ。至近距離で見るとやはり綺麗な顔をしている黒髪に紫のメッシュの入った髪整ったスタイルこれだけのルックスに社交性もあるというのにクラスではほとんど一人というのだから信じられん。もう5月も半ばだというのに友達作りを手伝ってやるべきかもしれんな。
「学外では生徒のだいたいは私に気づいた途端逃げていくというのに感心したぞ先生は」
「ええ本当ですか、こんなに生徒思いでいい先生いないのに」
休みも多いし授業中寝ることもあるがやはりこの子は性根のいい子だ。
友達作りなぞ手伝わんでも自然とできていくかもしれんな。うむうむ
「あっ先生怖いからか!見た目も怖めの美人ですしね。」
こいつは上げたと思ったらすぐに好感度を落としてきおったな、こういうところで友達ができんのか、友達作りの手伝いはやはりいるようだな。
「そう思えば上憑お前どうしてこんなオフィス街にいるんだ」
「ああそうでした」
そう言って上憑は畏まるように佇まいを正しこう言った。
「常吉さんよりご依頼いただいたビルの妖怪退治でまいりました。陰陽師上憑彼方でございます、今回はご同行のほどどうかよろしくお願いいたします。」
「はぁ!?お前がおじいちゃんが言っていた陰陽師とかいう詐欺師だというのか」
私は驚きのあまり大声で怒鳴り散らしていた。
「疑う気持ちはわかりますけど、そんな大声出さないでくださいよ先生」
「いやお前生徒がそんな怪しげな仕事をしていて冷静でいられるわけなかろう」
「まあ見えない人は普通そんな感じですよね、見せたほうが早いのでいきましょうか依頼のビルに」
そういって上憑は件のビルに入って行ってしまう。私は戸惑いながらもその背中を追いかけた大きなガラスの扉を抜け中に入っていく。内部の壁は淡いグレーで塗られ床は白いフロアタイルで覆われシンプルながらも洗練されたデザインの内装に落ち着いている。
奥にあるエレベーターへと上憑は向かっていく。
「おい見せるとはなんだ幽霊でも見せるというのか」
「まあそんなところです。ああ着きましたよこのエレベータが目的地です」
そういってエレベータの中に入っていく。
「うちの部下の調べによるとこのエレベーターの6階のボタンを押すと妖怪のいる異界に行けるらしいです。」
そういいながら上憑は5階ボタンの上何もないところを押す動作をした。
そうこのビルは5階建てで6階はないのだないはずなのにエレベータは閉まり6階へと向かっていく。
「今どこを押したなんのボタンもない壁を押さなかったか?なのになぜエレベーターは動きだしている!?」
私は得体の知れなさからか震えるからだを腕で締め付けるようにに抱きしめながら問いかけた。
「ああ先生あのボタンさえ見えなかったんですねほんとに見る才能ないんですね」
そんな会話をしているうちにエレベーターは到着の合図を知らせ鉄の扉が開きだす。目の前に広がっていたのは長い長い先の見通せぬ通路だった。いくら目を凝らしても先は闇に覆われ見通せない。私は当初の疑いの気持ちを捨て怖気ずき始めていた。
「帰らないか上憑、ふたりでラーメンでも食べに行こう。もちろん先生のおごりだぞ」
そういっている間に気が付いた私が立っているこの場所はエレベーターの中ではなく、通路に踏み出していた。自ら通路に踏み入った記憶はない。すぐに振り返ってエレベーターに戻ろうとするがそこにはエレベーターはなく壁だけが広がっていた。
「そんなにおびえなくていいですよ先生、僕が守りますから」
そういいながら上憑は空中に突如現れた血のように赤い池のようなものから抜き身の刀を取り出した。
「殺す、殺す殺す殺す」
刀のことなど問いただす間もなくそんな声がてけてけという音とともに聞こえてくる。音の聞こえる方向を向くと通路の闇の奥から上半身だけの女が両手で床を這うように向かってきていた。私はこの非日常に体が耐え切れないように腰を抜かし立てなくなってしまった。だが上憑はこの期に及んでのんきな口調で喋りかけてくる。
「あの上半身だけの女が幽霊騒動の原因ですよ、都市伝説として語られる現代妖怪てけてけまあ雑魚です。すぐ退治するので見ていてください」
てけてけはそんな言葉にイラついたように這う速度を上げ猛スピードで向かってきだした。上憑が刀を構える。もう開いていた距離はなくてけてけはどんな腕力をしているのか猛スピードのまま腕で飛び上がり飛びかかってくるその瞬間
「瑠璃、血鏡に沈めろ」
突如としててけてけの横から現れた白い毛に瑠璃色の瞳をした大きな犬の頭だけの化け物に先ほど刀が出てきた血の池に噛みつかれながら沈んでいった。
「そのまま沈み僕の式となるがいい。」
神の生贄 上憑くん ガラク @drgy9435
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