クラスで召喚されたのに、俺だけハブられた件
@Alphared
第1話 プロローグ
どぉぉぉぉーーーーーーん!
遥か前方でおおきな爆音が響き渡る。
「上手くいったようですね。」
城壁の見張り台で、横に立つ美少女が微笑みながら言う。
腰まで伸びた、緩やかなウェーブのかかった銀色の髪が、陽の光を受けて輝いている。
くるッとした、やや大きめの瞳が、悪戯っぽい輝きを漂わせて見上げてくる。
その紅い瞳をじっと見ていると、吸い込まれそうになり思考がぼやけてくる。
その小さな桜色の唇が、胃から、くすっと小さな吐息を漏らす。
小悪魔のような笑み、というのはまさしくこのようなのを指すのだろう。
「……というか、小悪魔だっけ?」
彼方は、小さく息を吐きながらぼそりと呟く。
「うー、酷いですよ。確かに今は
銀髪の少女……エルリーゼ・フェイマスが、少しむくれた様に言う。
「あ、いや、そういう意味じゃなくて……。」
彼方は慌ててエルリーゼの機嫌を取り始める。
彼女の機嫌を損ねたら、この後が何かと面倒なのだ。
「いや、エルの様な無茶苦茶可愛くて、何処か危険な香りがする女の子の事を、「小悪魔のような」って表現を、俺達の世界ではするんだよ。その事を思い出してさ。」
「えッ……そうなの……?私……可愛い?」
彼方の言葉を聞き、頬を赤く染めてもじもじしだすエルリーゼ。
「あぁ、可愛いよ、エル。」
「……んっ。」
彼方がエルの肩に手を置き、そっと抱き寄せると、エルは彼方の方に顔を向け、目を閉じてそっと唇を突き出す。
彼方はそれに応える様に顔を近づけて……。
「コホンっ!あー、そういうことは後で二人っきりの時にやってくれませんかねぇ?」
唇と唇が触れ合った瞬間、野暮な声が割り込んできて、二人はパッと、距離を取る。
「あ、あぁ、軍曹。いたのか?」
「……ずっといましたぜ?それよりこのあとはどうするんでさぁ?」
軍曹と呼ばれた男は、平静を保ってそういうが、背後でぴちぴちと床を打つ尻尾が、彼の苛立ちを現していた。
彼らリザードマンは、表情より尻尾の動きの方が、感情をよく表すことが多いので、かれらと相対するときは、尻尾の動きに注目する方が分かりやすい。
その事を理解するまでに、様々な苦労があった事を思い出し、彼方は苦笑する。
「悪かったから、そんなに怒らないでくれよ。取り合えずは警戒レベルをBまで下げて、半舷休息だな。前線の状況を見て、問題がなければ、トラップを貼りなおしてから、警戒レベルCへ移行。その後2日ほど様子を見てから警戒解除。斥候部隊は交代で引き続き情報収集にあたる様に。」
「イエッサー!」
彼方が指示を出すと、軍曹は直立敬礼をしてから駆け出していく。
「じゃぁ、私達も休みましょ♪」
エルが彼方に抱きつきながらそういう。
彼女の眼は少し蕩けていて、すでに発情モードに入っているらしい。
「ハイハイ。」
彼方は逆らわずにエルを抱き上げ、自分たちの部屋へとお姫様抱っこで運ぶ。
甘えたなエルは、これがお気に入りなのだ。
◇
「ねぇ、どうなったの?」
部屋に入るや否や、そんな声が掛けられる。
不安げな声を上げたのは朝霧摩耶……彼方のクラスメイトだった。
そう、クラスメイトだったのだ。
しかし、彼女の現状は、裸に剥かれ、身に着けているのは、奴隷であることを表す『隷属の首輪』のみ。
「ヤダ……みないで……。」
摩耶は彼方の視線に気づき、両腕でその豊かな胸を隠す。
「ぶぅ、またその奴隷を見てるぅ。」
エルがむくれてそう言うが、仕方がないだろ?
摩耶は、彼方の通う学園の中でもトップテンに入る美少女だ。
特に、その豊かなプロポーションに似合わない幼い顔が、一部男子の間で熱狂的なファンが出来ているという。
正直に言えば、彼方も摩耶に憧れていた一人だ。
そんな摩耶が、一糸まとわぬ姿で目の前にいるのだ。
しかも、今は彼方の奴隷という身分なので、その気になれば、彼女を自由にすることだってできる……まあ、その一線は越えてはいけないと、理性を総動員して、必死に耐えているのだが……。
「ふーん、そんなにこの女がいいんだ?」
エルは摩耶の腕を取り、ベッドへと引っ張り上げる。
「この牝のいやらしいところを見せてあげるねぇ。」
エルはそういうと、彼方に見せつけるようにしながら、摩耶を愛撫していく。
「あっ、いや、あっ、あっ、あぁぁ……ダメぇ……みないでぇ……。」
摩耶は必死に抵抗するが、エルの妙技にあっと言う間に服従してしまう。
そして、そんなのを見せられては、彼方自身の高ぶりが抑えられるわけもなく……。
「くすくす。彼方ぁ……きてぇ。」
甘えるようなエルの言葉に、抗う気が起きるわけもなく、本能の赴くままにエルを蹂躙するのだった。
◇
「彼方ぁ……好きぃ……。」
彼方は自分の右隣で、寝言を言いながらすやすやと眠るエルを見ながら「今日も抗えなかった」と自己嫌悪に陥る。
「彼方のバカぁ。」
左隣ではぐすん、ぐすんと泣きながら恨めしそうに見上げる摩耶の顔がある。
一応断っておくが、摩耶には手を出していない。
摩耶の同意なしに、そういうことをしないというのが、摩耶を奴隷にするときの条件だったからだ。
「バカって言われてもなぁ……。」
彼方は摩耶をみながらそう呟く。
前戯でエルに散々弄ばれた挙句、間近でエルと彼方の情事を見せつけられていたために、彼女の顔は真っ赤だ。それどころか、身体中が桜色に染まり、火照っているのが一目瞭然だ。
「慰めてやろうか?」
彼方は摩耶にそう言う。
摩耶を捕らえた時から行っていることだから、今の麻耶の状態が分かる。
エルが摩耶を散々弄んだ後で、目の前で彼方との情事に耽るところを見せつける。エルのスキルの事もあり、摩耶は発情しきっている状態で放置される。そして限界近くでエルが甘い言葉をささやき、身も心も彼方を受け入れる様に、と摩耶を堕としていく……いつもの流れであり、今日が初めてではない。
発情しきった摩耶がエルの言葉に抗える筈もなく、エルの言葉に堕ちていく……そうなるようにエルが仕向けているのだから。
そして、そして彼方もその事に反対はしなかった。というか、反対する理由がなかった。
それでも最後の一線だけは越えないように耐えているのは中々のモノだと思う。
思うのだが……それも限界のようだ。
「うっ、、ううぅぅぅ……ばかぁ……かなたのバカぁ……。」
麻耶は「かなたのばかぁ」と連呼しながら、内なる衝動に必死に耐えている。
正直凄い精神力だと彼方は感心する。
エルは、エルダーサキュバスと、真祖吸血鬼の流れを組むハイブリッド魅惑姫だ。
しかも祖父は魔王に連なる公爵位にある最上級悪魔族だから、内包している魔力も半端ではない。
現在訳あって、その能力の半分も使えないとはいえ、彼女の魅了魔力を長時間受け続けていて、自我を保っているだけでもすごい事なのに、数日間、抗い続けているのだから。
それでも、普段は「椚木くん」と名字で呼ぶのに、甘えたような声で名前よびをし始めたことから、現界は近いのだろうと思う。
「はぁはぁはぁ……彼方ぁ……私としたいのぉ?」
潤んだ瞳で見上げて、そう聞いてくる摩耶。
「……したいのは麻耶の方だろ?素直になれよ」
思わずいたずら心がわき上がり、摩耶の耳元で囁く。
「はぁはぁはぁ……そんなことぉ……はぁはぁ……彼方はぁ……私の事……好きぃ?それとも身体だけが目当てなのぉ?」
摩耶が湧き上がる快楽を必死に抑えながら、彼方の顔を真剣に見つめて聞く。
「わ、私は……初めては……好きな人とじゃないと……」
はぁはぁ、と息を荒くしながら麻耶が言う。
「好きだよ。ずっと前から憧れていた。」
彼方はそう言いながら麻耶を抱き寄せる。
これ以上揶揄うのはダメだと彼方は思い、真面目に答える。
「わ、私も……しゅきなのぉ……。」
麻耶が背中に回した腕に力を込め、顔を近づけてくる。
「ずっとずっと気になってたのぉ……」
もう、我慢の限界とばかりに、摩耶はその心の赴くままに唇を押し付けてきた。
彼方はそんな摩耶の唇を味わいながら、思えば遠くへ来たものだ、と、ここまでの事を思い出していた。
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