湊香あおと

石の日常です



はじめまして、石です。


医師ではないです。


意思も意志もないです。


何もできない、ただの石っころです。



でも、今僕は安全な場所にいます。


なぜ話せているかもわかりません。


男の子は僕を拾い上げて家に連れ帰ってきました。



そんな家付き石の日常です。



朝、7時ぐらいにお母さんの大きな声で男の子は起きます。


いつもいつもお母さんご苦労様です。


でも、僕は知っています。


お母さんは男の子が目覚める前、必ず男の子の部屋に来て頭を撫でてること。


いつも男の子ことを愛してやまない、お母さんだって石だけは知っています。


そんな朝を毎日繰り返しています。


朝ごはん食べ終えただろう男の子が戻ってきたら、男の子は学校に行く準備。


石も一回だけ連れて行ってもらったことがあります。


でも、石の一部が欠けてしまってからはもう連れて行ってもらえなくなりました。


寂しく、1人でお留守番します。


まあ、ランドセルの中でガタガタあれだけ揺さぶられたら、欠けない方が奇跡です。


いや、石の方が強くないといけないのかな?

まあ、しょうがない。だって、石はか弱い石なのかもしれないし。

どうだっていいですよ、他石と比べたっていいところしか褒め合わない。

これが1番楽しいんですよ。だって、いつ僕たちは周りと離れてしまうか分からないんだから。


なんで人間は比べ合うんでしょう。もったいないですね。


まあ、人間は人間、石は石ですから。


どうでも良いですけど。



さあ、時間をどんどん飛ばして、学校から帰ってきますよ。


今日は習い事もある日らしく、少し遅いです。


男の子は野球が大好きです。


実際僕がいるこの部屋にも野球の道具があります。


あ、特に野球の試合前はよく石のことを触ってくれます。


石はその時嬉しくなるので試合がいっぱいあると嬉しいです。


でも、泣いて帰ってきた後は石を触ってくれないのでそれは悲しいです。


石も泣いてみたいです。声を出してみたいです。


でも、伝えられない。


だから、今日も石は男の子を眺めます。


そして、一つでも多くの幸せが男の子に訪れることを願います。


きっといつか、捨てられるだろう、石ですが。


男の子と出会うまでは、知らないことばかりでした。


だから、石の意志が消えるその日まで


石は見届けますよ、おとこのこ。

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