褒めていただけなのに世界も彼も手に入ってしまいそうです

@yyunsuke

安らぐ香と暖かさ

「許(しゅー)、眠れない」

色白で痩せ細り、年の割には身長もない男の子が入ってくる。


「凱(かい)太子。夜に女人の部屋に入るのは駄目と言われたでしょ」

唇はへの字に曲がっているが、黄水晶の瞳は全く怒ってる様子はなかった。


「一人で寝るのは嫌なんだ」

言い終わる前には、許の布団に潜りこむ。

「五歳にもなって一人で寝むれないなんて凱太子は、赤ん坊ですわ」

「なら、許の赤ん坊になる」

「好き嫌いが多い、赤ん坊は嫌です」

それに、薬湯の香りがするのも嫌だと心の中で思う。


「許の部屋はいい匂いがするな」

許の腕に自分の腕を絡ませ、少しでも隙間があるのが嫌という感じで引っ付く。

「そんなに引っ付かれたら寝苦しですわ」

許より細い、凱太子の腕を引き剥がすではなく優しく撫でた。

「許は暖かいから」

凱太子が冷た過ぎるだと思いながらも、口には出さない。

「それは、好き嫌いせずしっかりご飯を食べて…」

もう隣で寝息が聞こえてきた。

「凱太子。病に負けないでね。私がなんとかするまで」


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