愛していると言って、チェリーの味のキスをして

優秀賞おめでとうございます。
スクールカーストの底辺で「道化」を強いられたオリバーは、母への侮辱を機に、執拗な加害者ヘンリーを撲殺する。その凄惨な暴力と謎の少女アンによる死体偽装が、緻密な五感描写で綴られている。特筆すべきは、甘いチェリーの味が血や吐瀉物の味へと変質していく感覚的な筆致。三幕構成の巧みな物語は青春の救済を装いつつ、共犯という名の永劫の孤独へと突き落とす。暴力の先にある、あまりに静かで痛切な「溺れる」感覚に、強烈に魅了される一作。

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