第12話:偵察任務
陛下の命令に応じて、大広間は慌ただしさを増していった。
だが俺の中では、まだ解決策が見つからず焦りが募るばかりだった。そんな時、見慣れた二人が近づいてきた。
「リク、少しいいか?」
メイリス団長が俺の肩に手を置いた。
「はい、なんでしょう?」
「陛下の信頼を得た今、そなたが次に何をすべきか、心に決めているか?」
俺は団長の真剣な眼差しに一瞬躊躇しながらも、意志を固めて答えた。
「団長、俺は調査隊を組織して、直接帝国周辺での情報収集に向かうつもりです。悪魔教徒の足取りを追い、彼らの計画を暴くことが最優先だと思っています」
メイリス団長は頷きながら微笑んだ。
「それが良いだろう。そなたの行動力と直感を信じている。だが無理をするな。我らも後方支援をしっかり行いつつ、準備を整える」
「ありがとうございます、団長。ですが、一つお願いがあります。」
「なんだ?」
「この任務に同行者を選びたいのですが、自分で指名してもよろしいでしょうか?」
団長は一瞬眉を上げた後、了承の意を示す。
「もちろんだ。信頼できる者を連れて行け」
俺は心の中で作戦の流れを組み立てながら、数名の顔を思い浮かべる。頼りになる仲間、そして今回の任務を共に乗り越えられる者たちだ。
声かけが粗方済み、移動していると声がかけられた。
「リクさん! 久しぶりです!」
明るい声で話しかけてきたのは、勇者候補のエリアスだ。
エリアスの隣にはセリナもいる。
「リクさん、お久しぶりです。今回の件、話は聞きました。私たちも力になれることがあればと思って……」
セリナの澄んだ声が広間の騒がしさを一瞬だけ和らげた。
話は結構広まっているようだ。
しかしそれは城内に留まっている。
「お前たちも来ていたのか。勇者候補なら、別の任務で忙しいと思ったが」
俺は彼らの突然の登場に少し驚きながらも訊ねた。
「確かにそうですけど、今回の話しは無視できないので協力することにしました」
「エリアスの言う通り、見過ごすことなんてできないです」
エリアスとセリナの言葉には、強い決意が感じられた。
勇者候補として育てられた彼女らが行動を共にすると言うのなら、それ相応の覚悟もあるだろう。
しかし、今回は悪魔教徒や黒晶石の存在が絡む複雑な状況だ。
「陛下は了承しているのか? 勇者候補であるお前たちを勝手に命令できない」
俺の質問に二人は頷きエリアスが答えた。
「はい。陛下からリクさんと一緒に行動するようにと言われました」
「なら分かった。ただ、俺の指示には従うように。今回ばかりは死ぬ危険が高い。覚悟はいいな?」
俺は二人を見据えながら、はっきりと告げた。
エリアスは即答する。
「もちろんです! 任せてください! リクさんの判断が一番信頼できるって、みんなも知っていますから!」
彼女の自信に満ちた態度は、周囲を少し安心させるような明るさを持っていた。
セリナも静かに頷いた。
「私たちはサポートに徹します。リクさんの指揮があれば、必ず成功すると思っています」
彼女の言葉は控えめながらも、その瞳には揺るぎない意志が宿っていた。
「ならばこれから一緒に動く。何度も言うが、状況が状況だ。軽率な行動は絶対にするなよ?」
今回ばかりは嫌でも真剣にやるしかない。下手をすれば、アルカディア王国のみならず、周辺諸国すら滅ぶ可能性がる。
それに、あの大広間で、それも陛下の前でジョークすら言えない。
作戦会議を行おうと通路を移動していると、メイリス団長から声掛けられた。
「話は聞いていたが、勇者候補の二人を連れて行くのか?」
俺は団長に向き直りながら答えた。
「はい。二人からの強い要望で。陛下から了承を得ているので。それに、エリアスとセリナなら、十分な実力がありますし、彼らの能力は今回の件でも役立つはずですよ」
メイリス団長はしばらく俺の顔を見つめた後、小さく頷いた。
「分かった。だが、二人の安全も確保するように努めてくれ。それがリーダーとしての責任だ」
「了解です」
一室に集まったのは俺やエリアスとセリナを含めた計十名だ。
作戦は緻密に練られ、進んでいくのだった。
数日後の夜、準備を整えた俺は自分の選んだ仲間たちと共に会議を開いた。
「俺たちは明朝、帝国周辺の偵察任務に出る」
俺の言葉に、集まった仲間たちは頷き、それぞれの役割を確認し合う。
エリアスとセリナも、仲間たちと確認を行っている。
「これからの行動には危険が伴うが、全員無事に帰還することを最優先に考えてほしい。そして何より、敵の目的を突き止めるのが俺たちの使命だ」
仲間には、長年戦場を共にした戦友でであり、全員が覚悟を決め、強い意志を見せているのが分かった。
「リクがいれば成功間違いなしだ」
「よっ、無名の英雄!」
「おい、やめろって……俺は英雄って柄じゃない」
そんな恥ずかしい異名で呼ばないでくれよ。
揶揄われた俺はさっさとお開きにして、出発まで各々休息を取るように命じる。
そして、夜が明けると同時に、俺たちは出発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます