-3-

 レヴェは悲しみの灯る涙を溢れさせた。


「また……君の死を見届けないといけないの……」


「レヴェにしか出来ない」


「そんなの……嫌だっ!そんな景色は二度と見たくないっ!」


 レヴェは張り裂けそうなほど声を荒げた。

 二度とモンドが死す瞬間を見届けないために時を止めていたレヴェにとっては、この上ない無慈悲な現実だった。共にいたい一心でこの残酷な運命を受け入れていた心には耐えがたい苦痛であり、光を受け入れることの無い絶望の花を咲かせるものだ。


 何故、二人は共にいることを許されないのだろうか? 

 何故、語り部はこのような生を授けたのだろうか? 

 何故、二人はこのような形で出会ってしまったのだろうか? 


 悲しみに絶望するレヴェにはモンドの声さえ届いていなかった。


「レヴェ」


「嫌だっ!モンドを殺すことなんて出来ない!俺はただ一緒にいたいだけなんだっ!」


「レヴェ」


「何でっ!何でこんな世界で君と出会ったんだっ!何で幸せな形で出会わせてくれなかったん、」


 再度、優しい口づけを落とされ発言権を失うと温もりのある胸へと引き寄せられる。全てを受け入れる暖かさに落ち着きを取り戻すと止めどない涙が更に溢れ、大地へと還り悲しみの波紋となって描かれていく。


「レヴェ、お前をこの世界物語から救いたいんだ」


「………………」


「いつまでも一緒にいよう」


「………………本当に……? 」


 レヴェの瞳は光にすがるように揺れており、視界からモンドを永遠に映そうとまっすぐに見つめる。

 そんな眼差しに同じく交差させるモンドは、どこまでも優しげな微笑を浮かべた。


「いつまでも一緒だ」


「……………うん」


「愛してるよ、レヴェ」


「俺も愛してる、モンド」


 二人は互いに引き寄せ会うと口づけを交わす。

 何処までも温かく、何処までも繋がりを得た愛は最後の別れを惜しむかのように絡み合う。深い口づけは互いを求め合いながらもゆっくりと離れる。交わる瞳は悲しみの色を残しながらも解放への世界を映し出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る