サルベージ

雛形 絢尊

第1話








一人娘が乗ったボートが転覆した。












長期休暇の後半を私たち家族は

湖畔のコテージで2日間過ごそうと

前々から計画を立てていた。



妻と一人娘を乗せて、私たちは現地へ向かう。



娘はきゃっきゃと騒ぎだし、

コテージの中を走り回る。

ありとあらゆる喜びの感情を放っていた。



私はその様子を横目に、外で一服をしていた。

一縷の煙が空へと続く。



あいにくの天気だが、景色は良いものだった。

いや、本当にあいにくの天気であった。



霧に覆われ、濁った空は今にでも

雨が降り出しそうな様子だった。



そんなことも洗い流すように、娘は外に移り、そこでもキャッキャと笑っている。

その様子を私と妻は微笑ましく見ていた。



こちらを向いた妻と目配せをし、頷き合う。

それはそれは真剣な表情で。






夕飯の支度を家族三人でしていた。



切ったり刻んだり、混ぜたり、炒めたり

そんなことをしているうちに

多くの料理が出来上がった。

カラーイエローの光が照らす

食卓に向かう私たち。




いつもとは違いテレビの音もないので、

近くで鳴く虫の音が聞こえる。




食器の当たる音、箸を突く音が家族の会話と相まってそれはとても賑やかな時間であった。

私はこんな幸せを表情に変え、

ひどく感傷的になった。




こんなにも愛おしい娘の笑顔を

一瞬でも失わせるのが怖くて。

円卓に並んだ食器が徐々に片づき始めていく。





道中で買ったケーキを楽しみに待つ娘、

洗い物を続ける妻。

私は堪えきれなくなって再び、

外で煙草に火をつけた。




それから私たちはケーキを優雅に食べ終え、

幸福なひとときを過ごした。

私は妻に目を合わせた。

妻も私の目を見ている。






娘の名を呼んだ。



















私たちは血が繋がっていないということを

娘に告げた。














彼女は持っていた背当ての

クッションをギュッと握りしめた。




ショックを感じ、

目のやり場に困る娘を見ていた。




別の人が父親で、

自分ではないと打ち明けたのだ。




やはり動揺が隠せないようで、

私はとても辛くなった。





娘は無言のまま、寝室に向かって足を早めた。





私と妻はどうにかして娘をこれ以上

傷つけないために話をした。





私は何度も何度もノックをし、

娘を呼びかけた。呼び続けた。













なんとかして娘を守りたい。











そう思う一方でこんな現実を

伝えても良いのだろうか、

これは間違いなのだろうかと、

試行錯誤を繰り返す。







何が娘のためで、何が娘を庇うのか。

























それから私たちはより一層、

笑顔が絶えなくなった。

それからが何よりも大切で、

未来にも繋がる良い日になったと思う。













私たちはどんな出来事からも、

娘の想いを引き上げたい。











































そうして今日、彼女は白いドレスを着ている。




























幸せになれ。














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