第3話
唐突だけど、身の上話をしようと思う。もちろん私の。
私は母の実家のある福井県で生まれた。
覚えてないけど、私が1歳、弟が生まれてすぐくらいに父が忙しすぎて構えないからって母と一緒に預けたらしい。そんな長くなかったらしいけど。
その後、東京に小1の秋までいて、長野の父の実家に来た。そこで一ヶ月くらい居候、新居が決まってまた引っ越し。
小4の秋にまた父の実家に戻ってきて、今に至る。
最近になってやっと、なんで引越ばっかりしてたのか知った。
父は、弟が生まれてすぐに起こった大震災の際、投資で大失敗した。忙しくて構えないってのも、なんとか立て直そうとしていたかららしい。
信用取引もやってたもんだから、結局、数億単位で借金を背負うことになった。貯蓄を全て放出したのはもちろんのこと、父の会社も、高い時計も車も、母の宝石も売ったのにまだ全然足りない。おまけに父の精神状態が悪くなったため、静養も兼ねて田舎で農業することにしたらしい。
私からすれば、よく5年も耐えたと思う。
言われてみればそんな節はあった。
新しい服は買ってもらえなくて、従兄のお下がりばっかだったし、食事も、量はちゃんとあったけど良質な食材ではなかった。他にもあげればキリがないから、ここは割愛する。
東京から引っ越そうとしていた時、母方の祖父が脳溢血で急逝した。享年64歳だった。その後、遺産相続の件で母は実家ともめ、4年の月日を経て決着をつけ、実家との縁を切った。
現状私が会える祖父母は3人、そのうち母方の祖母は母が縁を切ってしまったため、ずっと会っていない。
どちらにせよ祖父の遺産で借金返済は一気に進み、最近は贅沢もできるようになってきた。公務員だった母が、実入りのいい仕事に就いたというのも理由の一つではあるが。
こんなやむを得ない事情で、私は都会っ子からしがない田舎っぺになったのである。
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