特殊礼装メリケンサック【極】を装備して同高のヤンキーをブッ飛ばしてたら、いつの間にか最強になってハーレムが出来上がってた件

第1話 ダンジョンと天災人



 ————刻は21XX年。



 ある日突然、俺の通う藤ヶ谷ふじがや高等学校がダンジョン化してしまった。


 入学から程なくして大きな地震が発生し、気付けば見たこともない世界が広がっていた。


 ダンジョン化に伴い、学校は二十階建ての超巨大建造物と成り果て、一瞬にして魔獣の巣窟となった。職員室や保健室等、あらゆる部屋が異形の変化を成し遂げ、本来の高校の面影は完全に消え失せてしまう。


 そんな異常な変貌を遂げた藤ヶ谷高等学校のトップに君臨している天災人ヤンキー十門字じゅうもんじ死愚呂しぐろは、子分と魔獣を引き連れて学校を支配下に置いている状況だ。中学時代から素行の悪さが目立ち、地元でも多大な影響力がある不良少年である。


 奴を倒さなければ、藤ヶ谷高等学校は永遠に平和を取り戻すことは出来ないだろう……。



 ◆◆◆



 俺の名前は天馬てんまタクト。

 藤ヶ谷高等学校に四月から入学した男子生徒の一人だ。


 中学を卒業して新たな学校生活を楽しみにしていたはずだったのに、俺のワクワクは一瞬で塵となる。


 そう。入学四日目にして学校がダンジョン化し、校内は大騒ぎの大パニックに陥っていた。そんな中、不良グループが学校を牛耳り始め、リーダーを中心とした乗っ取りが行われていく。


 半年が経過した頃には、ほとんどの生徒や教師が環境に適応し始め、それぞれが生き残るために戦い方を学んでいった。



 ————そして現在。


 ————調理室前廊下【第二階層】



『おいゴラ。お前、俺らに楯突こうってんじゃねーよなぁ、アァ??!!』

「そ、そんなつもりじゃ……」

『おいっお前ら、ズタズタにやっちまえ』


 不良グループの下っ端であるヤンキーに因縁を付けられた俺は、魔獣を嗾けられ怪我を負わされていた。今の俺の力ではコイツらに太刀打ちが出来ない。


『オラオラオラ、そんなんじゃこの学校で生き残れねぇぞ』

「くっ……」

『お前弱っち過ぎるんだよなぁ。この学校では強さが全てなんだよ』


 このダンジョン化した藤ヶ谷高等学校で生き残る為には強くなければならない。弱きものは隅に追いやられ、強きものだけが富と名声を得られる過酷な世界なのだ。


『お前ほんといい鴨だよな。コッチ側に来りゃ楽なのによ! がっハッハッハ!』

「お前らには屈しない……」

『ああ?! なんか言ったかゴラ』

「……」

『ちっ、雑魚が調子に乗りやがって。行けやオーク』

『ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「がはっ……」


 魔獣オークの力強く振り下ろされる連続パンチによって、俺の顔面はボコボコに殴り散らかされた。なす術なく蹂躙されて身動きが取れなくなった俺は、保健室に運び込まれて治療を受けることとなる。



 ◆◆◆



 ————保健室【第一階層】<野戦病棟>


『はい。ポーションしっかり飲んでね』

「ぐびっぐびっ、ぷはぁー」

『どお? 少しは良くなったかしら』

南田みなみだ先生、ありがとうございます! だいぶ良くなりました」


 殴られて血まみれになった体は、回復薬であるポーションによって傷が塞がってきている。怪我を負った際の特効薬として、ダンジョン内で重宝されているアイテムだ。


『最近は運ばれてくる生徒が多いわね』

「この場所がなかったらとっくに滅んでますよ」


 本来学校に一つは存在するであろう保健室は、ダンジョン化の影響で、一つの野戦病棟へと変化を遂げている。ダンジョンに潜る生徒に取っては欠かすことのできない場所だ。最近では運び込まれる生徒が後を絶たず、日に日に患者は増える一方である。

 

『私たち教師もお金が足りなくて、中々物資を外部から調達できないのよね』

「常に生徒が持ち運べるくらいのポーションがあれば、戦況も好転するんですが……」


 学校は不良グループの幹部達が取り仕切っているため、お金が中々回ってこないのが現状だ。

奴らの戦力を削ぐには、魔獣とヤンキーを倒しまくるしか方法がない。


「あいつら何故か金だけは豊富に持ってるんですよね」


 天災人ヤンキーや魔獣を討伐すると、一定額のマネーを落とす。学校で武器や防具、食料を購入するのに必要なお金がマネーなので、必然的に魔獣狩りに行く必要があるのだ。敵が強ければ強いほど落とす金額も大きくなる。


『私としては不良の子達が更生してほしいのだけど……難しいのが現状よね』

「はい。奴らを更生させるにはぶち倒すしかありません」


 このダンジョンは外部への道が完全に遮断されている。仮に校内で死亡した場合は、重症の状態で外部へと転移させられる。外部には常に警官が周辺を見張っており、ヤンキーが弾き出された瞬間取り押さえられる仕組みだ。死に際の痛みは、本来の苦しみと同程度なことから、自ら死を選ぶ人間は少ない。


「まずは体制を立て直したいところですが、俺たちの主戦力は上層部にいますからね」


 味方である生徒会のメンバーが、上層部で奴らと激しい抗争を繰り広げている。一方で一階や二階にいる避難組は、基本的に戦いを好まない立ち位置にいるから、防戦一方になってしまっている状況だ。


『先生はここで貴方達を治療することしか出来ないわ』

「いえ、先生にはいつも助けられてますから。感謝してますよ」


 全くもって歯痒いぜ。

 俺が奴らに太刀打ち出来るだけの力があれば……。


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