第26話 離れられない二人
―――それから。
私たちはまず二人で二兎の小説の世界に行って、ペア登録の解除の手続きをした。
二兎はギリギリまで嫌がっていたけど。
「現実の世界でペアでいれば十分でしょ、指輪だって私は本物が欲しいよ!」
と私が言うと
「それもそうか...」
と納得してくれた。
ちなみにペア登録を解除してもキスはしないと現実には戻ってこれなかった。
まだちょっと恥ずかしさはあったけど、初めてちゃんとに二兎と見つめ合ってキスをして、私はなんだかとっても幸せだった。
現実世界に戻ってくると、指輪は本当にすっかり消えていた。
「あぁ~、せっかくの指輪が...」
と二兎はぐずぐず言っていたけど、
「早く本物の指輪がもらえるのが楽しみだな〜♪」
と返しておいた。
無理にカッコつけなくてもいいけど、さすがにそれくらいは頑張ってほしい。
現実世界に戻ってから、私たちはまず朝ごはんを食べることにした。
二兎の家の冷蔵庫はほとんど空っぽだったから、私の家に二人で行って、二兎が買ってくれたパスタを分けて、それだけじゃ足りないからパンも焼いて。
二兎はコーヒーを淹れてくれた。
私はほとんど寝ていなかったから、
「一旦寝かせて...」
とだけ言って自分の部屋に行って眠ることにした。
二兎はまた自分の家に戻っていった。
―――
しばらくするとお姉ちゃんが帰ってきて、
「愛!!!ちょっと!!!」
と言って容赦なく私のことを起こしに来た。
「うぅ、お姉ちゃん...」
「もう、愛ったら!」
「そういえばお姉ちゃん、昨日はどこに泊まってきたの...?」
「あぁ、隼人さんとごはん食べたあと、二人でカラオケでオールしちゃった☆」
マジか、お泊りデートかと思いきやカラオケでオールとは...
お姉ちゃんはパワフルだなぁ...
「そんなことより愛、ついに二兎と付き合い始めたんでしょ?」
「えぇ〜...、なんで私と二兎のこと、もう知ってるの〜?」
―――
お姉ちゃんが私たちのことを知っていた理由はなんと二兎の小説だった。
「二兎がさっき新作の小説をアップしてたの!タイトルは【離れられない二人】。読んでみたら、もうこれって絶対に愛と二兎のことでしょ!?としか思えなくって。」
私もちょっと浮かれてるかな?という自覚はあったけど、二兎もかなり浮かれてるっぽいな...
家に戻ってすぐに私達のことを小説にしちゃうなんてさ。
「ほら、愛も読んでみて!」
お姉ちゃんがご丁寧に二兎の小説のページを開いたスマホを渡してくれた。
うわ~、本当に私たちのことが書いてある!恥ずかしい...
「で、この小説はやっぱり二人の間に本当にあったことなのよね???」
お姉ちゃんが遠慮なく聞いてくるので、私は諦めて全てを話すことにした。
全部話し終わると、
「そっか〜!愛、本当におめでとう〜!」
と言ってお姉ちゃんは涙ぐみながら私を抱きしめてくれた。
さっきまでは恥ずかしいと思ってたけど、喜んでくれているお姉ちゃんを見てたらなんだかうれしさの方が大きくなってきた。
でも私と二兎のことが小説になって全世界に公開されてるっていうのは、さすがにちょっとしんどいかも。
二兎にはあとで言い聞かせよう...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます