第20話 はっきりしない告白

「えっと、そもそも俺、どこまで話したんだっけ...?」


二兎がやっと真剣な顔になったかと思えば、最初に口から出てきたのはこんな言葉だった。

でもたしかに、私もどこまで話聞いてたかをよく覚えていない。

牛丼休憩挟んだ上に昼寝までしてしまったからな...。



「うーん...ちょっと待って、思い出すから...」


私は必死で記憶を巻き戻す。

しばらく沈黙が続いたが、先に口を開いたのは二兎の方だった。



「まぁとにかくさ、俺にとって希も愛も特別なんだよ。ただ、特別の種類が違うけどな。」



お???なんか色々すっ飛ばして結論っぽいこと言ってきたぞ???

しかし私もどこまで話してたか思い出せないし、このままこの話に乗っかっていくしかない!



「特別の種類が違うって、どういうこと?」


「俺はずっと希を初恋の人だと思ってた。

 でもそれは違った。


 ただ、希は初めて俺の小説を褒めてくれた人で、今でも俺の小説を思う楽しみに読んでくれる人だから、そういう面では俺にとって特別な人なんだ。」


「ふぅん。」


「愛は、今まで俺の小説をちゃんとに全部読んだことはないだろ?」


「まぁないけどさ、二兎の方から読んでほしいって言われたこともないし...」


「愛には恥ずかしくて読んでほしくなかったんだよ。」


「お姉ちゃんには平気なのに?」


「俺が書く小説の設定って、基本的に主人公のモデルは俺で、ヒロインのモデルは愛だったから。」


「え???」


「そんで話の中で主人公とヒロインは最後に絶対に両思いになる展開だったから...」


「なによそれ...」


「しかも希と一緒に小説の世界に行くまでそれに気づいてなかったんだよな〜。」


「なんか一人で納得してるみたいだけどさ、つまり、どういうことなの???」



二兎はしばらく黙って俯いたままだったけど、真剣な顔で私の目を見てこう言った。




「希は、俺にとっては最高の理解者かもしれない。

 だけど俺にとってのヒロインはずっと愛だったんだ。

 それって、俺は愛のことがずっと好きだったってことなんじゃないかと思うんだが、愛はどう思う?」


「え?“どう思う?”って言われても...」



私にとっての二兎って、明るいけどダメなニートだし、手のかかる弟みたいな感じだったから...。


私は俯いて黙ることしかできなかった。

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