第16話 二兎の気持ち
「改めて話すってなると、なんかすげー恥ずかしいな。あとなにから話していいのかわからん。」
二兎が頭を掻きながら言う。
たしかに私たちってずっと一緒にいたけど、こんな風に真剣に話し合ったことってなかったな。
「でも全部話すって約束したしな、長くなるけど聞いてくれよ。」
「うん。わかった。」
―――
「俺が中学生の頃に初めて書いた小説、あの頃はまだインターネットも使ってなかったからノートに書いてたんだけど、希が勝手に読んでたことがあってさ。
すげー恥ずかしかったけど、希は“これすごく面白いね!続きも読みたい!”って言ってくれたんだ。
その時に、“あ、俺この人のこと好きだな。”って思っちゃったの。褒められたのが嬉しくてさ。
で、それからは希が楽しそうに読んでくれるのがうれしくて、ずっと小説を書いては読んでもらってた。」
―――
「俺の両親が突然事故でいなくなっちゃったとき、もう本当につらかった。
つらくてつらくて、現実にいるのが嫌になっちゃってさ。
でも死ぬのも怖いし。
そんで、“自分が書いた小説の中に行けたらいいのにな〜”とか考えながら、相変わらず小説だけは書いてた。
そんなこと続けてたら、ある日小説をサイトにアップした時に突然ガチャガチャが出てきたの。
【狙われない学園 VS セーラー服とマシンガン】の1話目ね。
愛がやったガチャガチャは【スーパーダーリン☆ガチャ】だったけど、俺のやつは【スーパーハッピー☆ガチャ】だったよ。
ちなみになぜかタダで回せた。」
―――
「俺、すげー怖くなってさ、とりあえず希に話したんだよ。
“小説書いてたらいきなり得体のしれないガチャガチャが出てきたんだけど、どうしたらいい?”って。
そしたら希は“え!めちゃくちゃ面白そうじゃん!回してみようよ!”ってなんの迷いもなくガチャガチャ回してカプセルも開けてさ、二人であの世界にワープしたんだよ。
で、まぁ愛のときと同じように、誓いの儀式して、キスして戻ってきたんだけどさ。」
―――
「戻ってきた時に、“なんか夢見てたんだな〜”って最初に思ったんだよ。
それは、小説の世界にワープしたこともだけど、希に対しての気持ちの答えでもあったんだ。
俺はずっと希に恋してんだと思ってたけど、それは夢だった、みたいな。
うまく言えないんだけどさ。
希は俺の小説を楽しみにしてくれる最高の理解者だけど、恋人同士になりたいわけじゃないんだって、こっちに戻ってきてからまず思ったんだよな。」
―――
私は二兎の話を黙って聞いていた。
しかし昔のことから話してるから本当に話が長い...。
ダメだ、さすがに限界。
「二兎、ほんっと〜〜〜に申し訳ないんだけど、朝から何も食べてないからお腹すいててしんどい!」
「おー、たしかにそうだな!よし、牛丼でも食いに行くか!」
二兎は思いっきり話を遮ったのにも関わらず、まったく怒らずに牛丼の提案までしてきた。
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