第6話 消えた物と消えなかった物
二兎の唇が軽く私に触れた。
幼稚園生の頃は遊びで二兎とキスしたこともあった。
でも今の私にとっては実質ファーストキスなのに、こんな訳のわからない世界でしかも相手が二兎だなんて...
そんなの嫌!もうこれは絶対に夢を見ているに決まってる―――
「おい、いつまでそんな顔してるんだよ」
二兎の声で目を開けるとそこはさっきまでいた学校ではなく、元いた焼肉屋からの帰り道だった。
変なガチャガチャも消えていた。
やっぱりさっきまでの出来事は全部夢だったんだ、よかった~!
「二兎、私飲みすぎちゃったみたい。ちょっと意識飛んじゃってた...。」
「は?何言ってるんだ?」
二兎からはよくわからない返事。
「いやー、小さい頃はよくお姫様ごっことかして目覚めのキスとかしてたけど、やっぱこの歳になると照れるもんだな...。」
「え」
「あっ、見てみろよこれ!」
二兎が左手を私に見せる。
そこにはさっき私が夢の中で嵌めた指輪があった。
慌てて自分の左手を確認するとそこにも指輪が。
「さっきまでのことって、夢じゃなかったの...?」
「現実世界に戻ってきたのにこういうのってちゃんとに残るもんなんだな。」
私は必死に指輪を外そうとしたけど、どうしてかびくともしない。
そんな私をよそに二兎はうれしそうに話す。
「なぁ、忘れな草の花言葉って知ってるか?」
「知らない!」
「真実の愛だよ!」
まるでミュージカルに出てくる俳優みたいに両手を広げている二兎。
「あんたみたいなニートがよく真実の愛だなんて言えるわね!ふざけんな!」
「厳しいな...しかし金で真実の愛は買えないんだぜ?」
「知らん!それよりも二兎、あんた今がどういう状況なのかわかってるの?わかってるなら説明しなさい!!!」
「うーん...。とりあえず俺の家に行こう、一緒にさっきの世界が舞台の小説を確認してみた方がいいかもしれない。」
このまま左手薬指の指輪が外れなかったら困るし、今は二兎の言うことに従うしかないか。
私たちは二人で二兎の家に向かった。
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