恋愛感情0から始まる大恋愛

天野川リリコス

第1話 デートなんかじゃないから

「愛も早く私みたいにいい彼氏見つけなきゃダメだよ!」


お姉ちゃんに毎日のように何度も言われる言葉。


「別に羨ましくないし!」


いつものように強がって返事をする。



私の名前は植木愛(うえき あい)。どこにでもいそうな27歳OL。

ただし彼氏いない歴=年齢。

一歳上の姉・希(のぞみ)は半年前に彼氏ができてから、毎日私にノロケ話をして最後には必ずお説教みたいな言葉を投げつけてくる。



お姉ちゃんの彼氏・和田 隼人(わだ はやと)は私の初恋の人だった。

中学の入学式の時、在校生代表で挨拶をした二歳年上の彼に一目惚れした。

その恋はずっと心に秘めたままだったけど、大切な思い出だった。

そんな彼がどうして今さらお姉ちゃんの恋人に???



お姉ちゃんは28歳になるが、高校を卒業してからまともに就職したことがない。

家の近所でアルバイトを転々としながらもう10年になる。

今はガソリンスタンドで働いていて、隼人さんはそこの常連客だったそう。


「いつも笑顔が素敵だな、と思っていて...良かったら今度二人で食事でも」


というお決まりの文句を隼人さんがお姉ちゃんに投げ掛け、そこから二人は順調にデートを重ねて半年前に付き合い始めた。



「今日は付き合って半年記念日だから、素敵なホテルのディナーに連れていってもらうの♡」


お姉ちゃんは聞いてもいないのに楽しそうに話している。


「ホテルのレストランに着ていける服なんて私持ってないからさ、愛のワンピース貸してね♡」


はぁ!?私の初恋の人を彼氏にしておいて、私が苦労して買ったブランド物のワンピースまで借りていくの!?


内心は怒りと悲しみでいっぱいになりながらも


「うんいいよ、目一杯楽しんできてね。」


と言って姉を送り出す。


「愛も今日は二兎くんとデートでしょ?お互い楽しい日にしようね!」


「二兎とデートとかあり得ないからやめて!」



相田 二兎(あいだ にと)は私の同級生で、私たち姉妹の幼馴染み。

家が隣同士で、両親同士も幼馴染みだったこともあって生まれた頃からずっと一緒に過ごしてきた。


二兎は「俺は小説家になる!」と言ってそこそこ良い大学まで出たのにずっとニート生活を送っている。

そんな奴とデートとかほんとにあり得ないけど、お姉ちゃんがデートに行くのに家で一人で過ごすなんてつらいし、一緒にいて一番気を遣わなくて済む相手が二兎な私は今日も彼と夕食を食べるために出掛けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る