第20話

すごく幸せな夢を見た気がした。


瞬に何度もキスをされて、抱き締められて。


それから何度も名前を呼ばれた。





薄く開いた視界にはまだ薄暗い部屋の景色。


寝返りをうつと、目の前には大好きな人の寝顔があった。


ほんの一瞬びっくりするも、さっきの夢が昨夜の出来事と一致する。



まじまじと瞬の寝顔を眺める。


好きって感情が昨夜よりも倍増した気がした。



指を伸ばせば、「おはよ」と瞬の瞼がゆっくり開いた。


「おはよ!!」


慌てて私は体を起こす。


手首をやんわり掴まれ「体大丈夫?」と尋ねられた。


昨夜の記憶が鮮明に残っている。


「大丈夫!」


恥ずかしさのあまり目線を外した。


「なに照れてんの」


意地悪く口元を緩めた瞬は「こっちまで照れっから」と薄っすら頰を染める。



「でもまぁ大丈夫なら…」


そこで続きを止め、「加減しなくていーんだ」と掴まれていた手首を引っ張られた。


「わ!」


私のおかしな声と同時、仰向けの瞬に覆い被さる。


そして、瞬に掛かる私の髪をサラリと払い、そのまま真下へ引き寄せられた。


唇が離れると「顔すげー熱い」と、瞬は笑う。


「な!慣れないの!」


昨夜もあれだけ交わしたキスだが、早々すぐに慣れるものではない。

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