第18話

「なんだよ」


不機嫌そうに眉を寄せられる。



「今さら無理とか無理だかんな」


「わかってるよ」


「じゃぁなに。我慢しなくていーつったの菜緒じゃん」



服を掴む手に力を入れ、「俺我慢しねーよ?」と言い捨てた。


「違うの」


「なにが」


「電気!!」


真上を指差し、「電気明るいのやだ…」と遠慮がちに吐いた。


「別にいーじゃん」


「いくないよ!」


「暗くても見えるもんは見える」


「見えないもんは見えないもん!」


折れない私に瞬はようやく観念した。



「へいへい。わーったよ」


瞬が上半身に何もまとわず電気のスイッチを消しに向かう。


鍛えぬかれたその逞しい体に見惚れてしまった。





パチっと消された部屋は真っ暗になった。


「なんも見えねー」


明るさに慣れた目は暗闇では中々都合が悪い。



ゆっくりとこっちへ戻ってくる瞬へ一言。



「瞬…なんか手慣れてる」


「は!?」



あんまりにもスムーズに進める瞬にボソリと言う。


「なんか慣れてるもん!」


この雰囲気の中で薄っすら感じていた事を口にしてしまった。


私と同じだとつい思い込んでいた。


だけど瞬の器用な手付きはそんな考えを疑うには十分だった。

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