第6話

翌日の終業時刻。



2人の無理難題な提案に、「無理だよ…」とため息を零す。



瞬と同じ教室もようやく慣れた。


後ろの席の瞬は土屋君と雑談中のようだ。




「ねーね」


瞬を見つめていた私へ、声が掛かった。


「へ?」


振り向くと、後ろの席のあまり話したことのない女子だった。


「前から聞きたくてさー」


その女子は少しばかり小声で「山崎さんて本郷君と付き合ってるの?」と聞いてきた。


「や!別のクラスの友達がさー本郷君の事かっこいーて言ってたからさ!」


付け足すように言った目の前の女子も、おそらくその中の一人だろう。


「付き合ってるの?」


その質問にすぐに返事すればいーものの、できなかった。


だって自信がない。


付き合ってると言っていーものなのか。



「ねー山崎さん聞いてるー?」




返事に詰まる私の上から「付き合ってるよ」と滑らかに別の声が答えた。


女子が見上げる先には、瞬がいつの間にか立っている。


あまりにもすんなりと答えるのものだから「え、あ、そーなんだ」と女子はそれだけ残した。





「菜緒」


背後にいた瞬が「帰んぞ」とだけ告げ、踵を返す。


「あ…う!うん!」


私は状況を飲み込めないまま、瞬の後を追った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る