真夜中の訪問者

@murari614

第1話 真夜中の訪問者

今夜も、物音も立てずに扉の前へやってくる。

気配はするが姿を見たいとは思えない私は、ただ黙ってキーを打っている。

暗闇に光る街灯の中で、彼は何を思って時を駆けてゆくのか。

霧の中の埃を見つけるかのような、未来への希望を思うのか、

特に何も思うことなく、持て余している自分を消し去るのか、

明日の人生だけをつくる事だけに、ただただ集中しているのか。


ひとつ確かなことは、

いま私の心を完全に満たしたという事実。

その訪問者は、きっと数ある中での行動にすぎず、

今のこの時の事など、何も感じてないのかも知れないが、

私は、いま、小さな幸せを受け取った。


彼は、きっと、そんなこと分かってないだろう。

また同じ今日という日が終わると思ってるかもしれない。

そんな事はないのだ。

細やかな満腹と幸福を私に与えることができたのだ。


今夜もUber配達員に、感謝。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

真夜中の訪問者 @murari614

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る