何色。

@necocorone

第1話

───「陽色くん知ってる?人にはたくさんの種類の色があって、同じ色の人はいないんだって!私は何色なのかな」───




そうだなぁ。君の色は───







...僕は白と黒以外の色を知らない。世界が、人が、生命が、全て白黒に見えるんだ。

みんなが言う赤とか青ってどんな色なの?僕には分からない。でもこれだけは言えるんだ。


───初めて君と出会ったとき

君は鮮やかな「黄色」に見えた───


第1話【石上 何色】


僕の名前は 石上 陽色 (いしがみ ひいろ)。

田舎町に住むごく普通の17歳の高校2年生だ。

趣味は読者で、若くして天才小説家となった、

君嶋 彩千(きみじま あやせ) のファンでもある。

君嶋は天才的な才能をもつ有名な小説家でありながら、顔・性別・本名・年齢の一切を隠して活動を行っている一風変わった小説家なのである。


そしてもう1つ、変わっているところがある。

それは、公開した全ての作品において、

紙の「白」と文字の「黒」以外に色がないことである。

これが僕が君嶋作品を好きになった理由と言ってもいい。僕には色が分からない。白と黒以外の色を知らないんだ。だから、君嶋の作品はこんな僕に寄り添ってくれているような気がして、どこか心地よいのだ。



生徒A 「おい。見てみろよ。また石上のやつ教室の端で小説読んでるぞ。」


生徒B 「本当だ。アイツずーっと小説ばっかり読んでるよな。体育も美術もやらねぇし。」


生徒A 「昔噂に聞いたんだけどさ、石上、色が分からねぇらしいぞ!」


生徒B 「マジかよ...!? じゃあこのボールペンの色もわかんねぇのかな?試してみよーぜ!」


生徒A 「おーい石上っ!このボールペンの色はなーんだ笑」


色は分からなくても耳はしっかりと聞こえている。だからコイツらからの悪意は十分に感じている。でも実際何色かは分からない。


石上 「黒。」


生徒A 「こいつマジかよ草 正解は赤でした!」


生徒B 「本当にわかってないんだな〜。

じゃあお前は今日から陽色じゃなくて、何色だな草」



何色...。これは嫌がらせのはずなのになぜだろう。しっくり来てしまう。僕は生まれてこの方ずっと色への疑問を持ってきた。自分の名前に色の文字が入っているのも皮肉だと日々嫌ってきた。しかしこれが疑問形になるとどうだろう。今の僕そのものではないか。

色のない世界で1番色に執着している。そして答えを探している。



───僕は何色?

あのときであった君は何色?───




つづく

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