血が骨壷に入る
ZIN
第1話 朝食
「
そう呼ぶ声で私はまぶたを上げたと同時に胸が高鳴った。
私の両親は共働きで同じ会社の部署に勤めている。父は無口な人で笑っている姿も目にしたことがない。母は少し厳しい人で、小さい頃よく叱られた、玩具などの欲しい物もあまり買ってもらえることはなかった。
高校1年生の6月くらいから話すことがだいぶ少なくなった。私の寝起きが悪いため母が朝起こしてくれるとき以外に喋ることがない日もざらではなかった。両親は遅くに帰ってくるのに加え、私が早く寝ることもあって夜に会話もあまりすることがなかった。同じ部署なため出張なども2人で行くことがあり、朝早くから夜遅くまで帰ってこないこともたまにある。が話すことが少なくなったあたりからそういう日についてあれこれ私に伝えることも無くなっていったが、そういう日は祖母の
一ヶ月前まではおばあちゃんは午前中までに家事を終わらせて帰っていたのだが、祖父が亡くなってからは、一日中家にいることが多くなった。昨日は部活で疲れきっていたというのに布団から足をバッと出し、早足で階段を降り
「おはよう」
とおばあちゃんに声をかけた。おばあちゃんは朝食を食べ終わっているようで、パンくずが乗った皿の前でコーヒーを飲んでいた。おばあちゃんの向かい合わせの場所には、目玉焼きがのった食パンにレタスとウインナーが添えられた皿と湯気がたっているコーヒーが置いてあった。私は朝食はパン派だ。いつもは父も母も姉もご飯派なため、朝食はご飯だが、おばちゃんは私と同じパン派だ。そのため朝におばあちゃんの声が聞こえるということは朝食がパンだという事だ。それにいつもの普段の朝食は質素なもので副菜がなく、卵焼きや目玉焼きだけなのが毎日だ。私以外の家族は文句ないようだが私はこの朝食に不満があり、卵焼きも目玉焼きもあまり好きではない。その点おばあちゃんが作ってくれる朝食はバランスがよく、目玉焼きや卵焼きもお母さんが作るものより質がいい。いつもはあまり食べる気がしない朝食もおばあちゃんが作ってくれるものはとても食欲が湧く。
「おぉ、おはよう」
と返事をするおばあちゃんは微笑んでいた。おばあちゃんは席を立ち、シンクに向かった。私は小型のテレビの横のリモコンを取り、朝食の前に座った。テレビをつけると天気予報が映った。おばあちゃんは瓶入りの塩を
「はい」
と優しく言いながら目玉焼きの隣に置いた。
「ありがとう」
そう返事をし、私はニュースを見ながら朝食を味わって食べ進めた。
「最近は暑くって大変ねぇ、部活は大丈夫かい?」
「全然大丈夫だよ!」
そう心配させまいと強がった。
「淡実ちゃんはいつも頑張ってるんだから、休日くらいゆっくり休みなされ」
「うん、分かった」
うんうんとおばあちゃんは頷いた。
「でも今日は、学校の友達と遊ぶ約束してるから出かけて来るね、4時くらいには帰ってくる」
「わかったよう」
そう言いおばあちゃん は席を立ち洗面所へ向かった。私は朝食を少し早めに食べ終え、食器をつけ置きし、私は駆け足で自室へ戻った。
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