悲恋のお姫様
「いやぁぁああぁあぁあぁぁ…!!!!!」
花音は18年の人生で一度も出した事のないような大きな悲鳴を上げていた。
ついさっきまで博物館にいたはずなのに、気が付くと空中に浮いていて、眼下には川。
川の近くに、鮮やかなピンク色の着物を着た女性を視界に捉えたが、
「…っ!?」
それは一瞬の事で、すぐに大きな水しぶきを上げて川に落ちた。
「…っぷはっ!」
(冷たっ!何が起きたの!?もう!何!?なんなのっ!?)
水面から顔を出した花音は、溺れないように もがきながら周りを見る。
すると、さっきの着物の女性と目が合った。
「大丈夫ですか!?お手を…っ!」
着物が濡れるのも気にせずに川に入った その人が、花音に手を差し伸べる。
花音は必死の思いで その手を掴んだ。
女の人の側には、やはり着物姿の お婆さんがいて、一緒に花音を引き上げる。
助けられた花音は、頭を下げてお礼を言った。
「ありがとうございました、助かりました…!」
それから顔を上げ、女性の顔をちゃんと見た花音は驚いた。
「沙織!?どうしちゃったの!?
着物なんか着ちゃって!」
その人は、顔も背格好も沙織そのものだった。
花音は声を上げ、目の前の女性の肩を勢いよく掴む。
その人は戸惑いながらも遠慮がちに一言。
「さ、沙織って…どなたですか?
それに そのお召し物、貴女は…異国の方なのですか?」
「な、なに言って…?」
目の前の人物は、服装と髪型が違うけれど、確かに沙織だった。
「なんの冗談?異国って何?
私、花音だよ!?」
動揺した花音は、掴んだ肩を勢いよく揺する。
「こら、止さぬか!」
そんな花音を着物姿の男性が掴み、その女性から引き離した。
その男性は髷を結っていて、まるで時代劇の登場人物のよう。
(…どうなってるの…!?)
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