首を傾げた花音を見て、沙織は溜め息をつく。



「知らないの?朝、ニュースでやってたよ?」



「…見てない。」



「えっ!?…あ~、今朝はそれどころじゃなかったか~。」



笑う沙織に、花音はコクコクと頷く。



「始まるまで、あと数分ってとこね。私ちょっと御手洗いに行ってくる!姫は?」



「私は大丈夫。…荷物、持ってようか?」



「ううん、大丈夫。そこで待ってて!」



沙織は、そう言って御手洗いに向かって駆けていった。


残された花音は、何気なく近くの展示品を見る。



そこに展示してあったのは、直径10センチ程の小さな青銅の鏡だった。


弥生時代に中国大陸から渡ってきたものらしい。変わった模様のような文字が刻まれていて、花音には読めなかったが、


『久不相見 長毋相忘』


と書かれているらしい。



(…どういう意味だろう?)



そう思って説明板を見る。


そんな花音の横を、隣のクラスの男子が、彼女らしき女子の手を引いて駆け抜けた。



「急げ!日食始まるぞ!」


「待って~!」



そんな2人を見送りながら、花音は思う。



(いいなぁ…恋人なんて羨ましい。


彼氏なんて いた事ないし、自分から告白なんて、怖くて絶対出来ないし…。


だけど…、素敵な出逢いが欲しいな…なんて、夢のまた夢だよね。


もういっそ逆ハーとか?そういう状況にならないと私に彼氏なんて無理かも…)



そんな事を思って苦笑した直後、目の前の銅鏡が光った気がした。



「…え…?」

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