大変な一日

序章















(…冷静になれ、姫野 花音!


頭の中を整理するのよ!どうして こうなったのか…!)




すっかり夜も更けた頃、畳の香りがする八畳の和室で一人の少女が目を丸くしていた。



(今朝まで、私は普通の女子高生だったはず!それが どうして…!?)



行灯(あんどん)の灯りが、ぼんやりと花音を照らす。


その姿は、純白の着物に身を包んだ婚礼初夜のお姫様。



(どうして こんな形でファーストキスを奪われなくちゃいけないの!?


それも…っ!)



動揺する花音の視線の先で男が一人、困ったように笑っていた。


この人物が花音の初キスの相手なのだが、


この男は花音の婚礼相手ではない。



そもそも『男』と呼んで良いのか迷うところだ。


その男は、白粉を塗った白い肌に真っ赤な紅を引いた唇で、きらびやかな赤紫色の打ち掛けを羽織り、尼のような頭巾を頭に被っている。


頭巾の下から僅かに覗くのは、

月代(さかやき)を剃った ちょんまげ頭。


そんな人物が片膝を立てて座り、花音を見つめている。



花音は涙目になりながら、心の中で叫んだ。



(それもっ、こんなオカマさんにーーーっっ!!)






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る