第111話
横に骨壺があり、これが楓の成れの果てかと思った。
遺影の楓は一体いつの頃だろう?見る者を魅了するような笑顔を向けている。
整った顔立ちに大きな瞳、つややかで手入れが行き届いたロングヘア。
楓は私にとって恐怖でもあり、憧れでもあった。
あんたは私を人間扱いしなかった、最後はあんたの方がただの灰になっちゃったね。
私はまだちゃんと人間のまんまだ。
お焼香が終わると、楓のお母さんはケーキと紅茶を出してくれた。
「あの子も仲の良い友達が何人か居たんですか、入院する前にあんな騒ぎを起こしてみんな怖がって結局1人ぼっちのまま死んでしまった」
「いえ、そんなことは」
「こうしてわざわざ足を運んでくれたのは、あなただけ若宮さん、ありがとうございます」
楓の母親は手をついて私に礼を言う。
こいつは楓が学校で……外でどういう人間だったのか知らないようだ。
知っていたら私に対してこんなセリフは吐けない。
「でも、楓さんはどこか悪かったんですか急にお亡くなりになるなんて?」
私の質問に母親の顔に悲しみの色がさした。
「ああなる前はどこも悪くなかったんだけど、たくさん苦しんだ挙句にショック死なのよ……」
ショック死……
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