第25話

どういうことだろう?



昨日、私が中へ入れたのは何だったのだろう?



やっぱり私より先に先生が来ていて鍵をかけたとしか思えない。




「でもこんな早くに来る?いくら自殺があったからって……」



まあいいや。



ここで考えるのは止めよう。



いつまでもここにはいられないし。




誰かに見られる前に、私はその場を後にした。



数歩過ぎてから振り返ると石井君が首を吊った木を見る。



花束やお供えの類は一切置かれていなかった1本の華もない。




あいつらに睨まれるから誰も怖くてそんなことはできない。



もし私がここに花を供えたとしたら、すぐに私か他のメンツがあいつらに何か言われるだろう。




薄情で情けないのは私も同罪だった。



同時に私が死んでも誰もそこに花を手向けないだろう。



いじめられている私達の誰が自殺しても。




私達はそんな程度の存在だった。




早く立ち去らねばという気持ちを抑え、石井くんが首を吊った、昨日前に行くと膝を折って両手を合わせた。




自分の不甲斐なさと臆病さを石井くんにお詫びした。

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