12/21

 まずい、このままではクリスマスが中止になってしまう。

 父さんが裏返った声で言う。


「そ、そうだ! 図書カード! 図書カードは!? 本なら間違いないよね!?」


「なんで宗介さんが慌ててるんですか。もうチキンも食べちゃったしクリスマス中止でいいじゃないですか。宗介さんは後輩さんとあつ森でクリスマス祝ってればいいじゃないですか」


「やだよ! 珠子ちゃんとタビトと清少納言さんとおいしいもの食べたい!」


「おいしいものを作るには時間もお金も手間もかかるんですよ。きょうみたいに適当に済ましてもいいんじゃないですか?」


「そんなクリスマスやだよう! それならいろはカルタとか偉い人の本のほうがまだマシだ!」


 父さんが完全にドラえもんののび太くんになっているのはどういうことだ。そうだ、父さんはこの家を建てるときに、ハウスメーカーの人に「ドラえもんののび太くんの家にそっくりにしてください」と言った人だ。しょうがないのかもしれない。


「……あ」


 清少納言がはた、と何かを思いついた顔をした。(つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る