12/18
政子ちゃんがお人形さんを買ってもらうのはわかった。さて僕はなにをねだるべきか。
本は楽しいがよほど好きな本でないかぎり読み返さないのでちょっともったいない。ゲームは楽しいが楽しいだけで終わってしまう。
もっとなにかいいものはないか。
クリスマスはもうすぐだ。
思うに僕は自分の欲求を表現するのがわりと苦手なタイプなのだと思う。
進路に迷っているのもそういう理由だ。やりたいことがわからない。欲しいものがよくわからない。
こういうのが極まると病気になってしまう。それはいやだ。素直に欲しいものを考えねば。
うーん。
……靴?
冬の通学に履いているしまむらのショートブーツは合皮が古くなってヨレてきた。去年買ってもらったのにもうこれだ。もうちょっとちゃんとした靴が欲しいな。うん、それがいい。
階段を降りていくと母さんも父さんも清少納言も文筆業者をやっていた。ちょっと声をかけていい雰囲気でない。みんな殺気がすごい。
「……タビト、クリスマスほしいもの考えた?」
父さんがそう言ってポメラから顔を上げた。
「うん、靴……いま履いてるの古くなってきちゃって」
父さんは少し考えて、「それはだめだ」と言った。(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます