12/13

 家に帰ってくると、父さんはたいへんのんびりとゲームをしていた。「どうぶつの森」は雪かきしなくていいのに雪だるまを作れる謎の雪が降る。マロは父さんの膝でまったりぽんと寝ていた。


「おかえりー」


 父さんがすっと手を挙げる。


「さて……出る前に仕込んでおいた試作版ローストチキンを出してみますか」


 母さんはオーブンを開けた。唐突に異様に香ばしい、ヨダレの迸る香りがして、マロを含む家族全員がそちらを向いた。


「おー、なかなかよく焼けてる。やはり土井善治先生のレシピは最強だ……」


「なんそれ、ニワトリまるごと焼いたの!?」


 清少納言が目をまんまるにしている。


「うん。クリスマスに作ろうと思ってたけどぶっつけ本番は怖くて。焼き加減がどんなもんか確認したかったし」


 オーブンからローストチキンがどどんと出てくる。父さんは大至急でゲームをセーブし、マロは鼻を肺炎になったときよりヒクヒクさせ、僕は口半開きでローストチキンを眺める。(つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る