どうしてボディビル大会の掛け声は名誉毀損の罪に問われないのか

みなもとあるた

どうしてボディビル大会の掛け声は名誉毀損の罪に問われないのか

「肩にちっちゃい重機乗せてんのかい!」という掛け声は、一見すると名誉毀損に該当するように思われます。


なぜなら、「重機は大きくてなんぼなのにちっちゃかったら工事現場で役に立たないだろ?つまりお前は役立たずって訳さ」という風に捉えられるおそれがあるためです。


確かにボディビルダーのパワーがあれば肩に重機を乗せることは簡単にできますが、ここで大事なのは掛け声で使われている表現が「ちっちゃい重機」であるという点です。


なぜ「ちっちゃい重機」が誹謗中傷にならないかというと、「ちっちゃい」という表現が具体的なサイズを示しておらず、誹謗中傷と呼ぶには具体性に欠けるという判断をされるためです。


名誉毀損として立件されるためには、ある程度の具体性が必要なのです。


例として、「あの政治家は悪いことをしている!」と言ったとしても、具体的にどんな悪いことをしているのかが全くわからないため、名誉毀損にはなりにくいといえます。


また、「ちっちゃい重機」に実在性がないという点も重要です。


実在していないものに関する名誉毀損は成立することがありません。例えば、いくら火星人の悪口を言っても火星人の名誉を毀損したことにはなりませんし、「おまえ火星人みたいだな」と誰かに言ったとしても、誰も火星人に会ったことがないため名誉毀損にはならないのです。


このように、「ちっちゃい重機」というものがそもそも存在していない時点で、「肩にちっちゃい重機乗せてんのかい!」という掛け声は名誉毀損にならない事がわかります。



さらに、公共の利益に関しても考慮する必要があります。


名誉毀損にならない例外として、内容が公共の利益になっているケースがあります。


例えば週刊誌は芸能人のゴシップを広めて社会的信用を失わせることがありますが、これはあくまでも「誰かの悪事を世間に広めることは公共のためになることだ」という前提があるため、名誉毀損にはなりにくいのです。


ボディビルダーの場合も同様で、掛け声を使って巨大な筋肉の存在を周りにアピールすることは公共のためになりますので、名誉毀損にはあたりません。



いかがだったでしょうか。


名誉毀損とは、「公然と事実を指摘し、人の名誉を毀損した場合」に適用されるものです。


指摘すること自体が問題で、実際に精神的なダメージを受けたかどうかは関係ないのです。


ボディビルダーは鋼の肉体を持っていますが、メンタルは必ずしもそうではありません。


皆さんもボディビルダーに掛け声をかける際は、「自分がもしボディビルダーだったらどんな気持ちになるだろうか」という立場になって考えるようにしましょう。

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どうしてボディビル大会の掛け声は名誉毀損の罪に問われないのか みなもとあるた @minamoto_aruta

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