第10話

それはここにきて一年が過ぎたころだった。



たしか五月……



日差しが強くなって暑くなってきた頃の昼だった。



昼食をすませたときに日向が私の前に現れた。



「注目――!!」



食事の後にみんながくつろぐホールに教官の声が響く。



見ると高級なスーツを窮屈そうに着た、ガマガエルのように肥えた男が教官数人を引き連れて、横に可憐な少女を絶たせていた。



「あっ、鯨螺 ( ゲイラ ) だ」



「ほんとだ。あの子誰?」



鯨螺というのはここを管理している男。



表の顔はこの街の名士らしい。



つまり「良い人」。



でも本当はこの売春施設を管理してる下種野郎。




そしてこいつ……



私のこと気に入ってる。

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