第3話 襲撃 さらに横槍

「ハチグマの情報を整理するわ。」

 妙に気合の入ったスーツらしき物を着るフォンさんが話し始める。

「前提として私達はハチグマを捕らえることを目標に活動してきたわ。そして理由は一つ、ハチグマの後ろにある組織の情報を得る為。ハチグマは唯一分かっている鍵なのよ。」

「そらそうだな。そのハチグマに苦戦してるわけだが。」

 ケンジさんは真剣な顔で話を聞いている。レオセンさんはタバコみたいな物を吸っている。

「ハチグマはいわば悪人相手の強盗みたいなもの。世間…というか法律の外にいる人間から物を盗んだり、殺したりする男。情報を吸い出した後ももしかしたら使えるかもしれないわね。」

「で、ハチグマはいまユマチ周辺に居ると分かったからこうやって調査してたわけだな。わしの有給を全消費した報いを受けさせてやろうかの。」

 レオセンさんがタバコらしき物を吸い終わったのか、話にはいってくる。

「ハチグマにしちゃあとばっちりもいいとこだな。」

「で!今ハチグマはユマチのコンテナエリアに居ることが分かったわ。そこを襲撃よ!」

「…作戦はどうするんだ。」

「無いわ。」

「レオセン…さんこいつどうしましょう。」

「わしもムカついてきたが、まぁ確認してないわしらも悪い。貸しは一つじゃしな。一つ分は働くとしよう。」

「サイトウ君はこれで分かった?」

「わかった。僕はフォンさんに従うよ。」


 襲撃の決行日

「さ〜て、ハチグマは何処に居るのかな?」

「誰も居ませんね。」

「サイトウ君はもう少し下がってな。巻き込まれたら困るからね。」

「は…」

 突然視界が暗くなる。

「サイトウ君無事かな?ってサイトウ君!何処にいったの?まさか…」


 

「何故フォンの隣に君が居たのかは分からないが…都合よく君を攫えたよ。」

 目に何かを撒かれたのか目の前が真っ暗だ。

「さっさとしろ。」

 今度は別の人の声が聞こえてくる。

「今私が何を言ってるかわかるかい?」

 手足は縛られているようだ。

「わかります。」

 取り敢えず素直に返事をする。

「そうか…君がフォンの隣にいる理由が分かったよ。私はさっきまではハルア語で、今はエンザート語で話しかけた。そして返事は流暢なエンザート語で帰ってきた。この状況を異能と取るか、ただ知識の成せる技と見るか。さてどう思う?オオサカ君。」

「知らん。」

「冷たいなぁ…提示額が足りなかったかい?まぁいいや。知識にしろ異能にしろ使い道は沢山ありそうな少年だ。良いことを知った。」

 オオキ−イチジョウ

 ブルートゥス

 また頭に名前が浮かんでくる。今回は二人分同時にだ。

「じゃあオオサカ君。フォンに少年を返しておくれ。バレないようにね。それと君…」

 目隠しを取られる。

「私はAXEの隊員だ。」

 カシャッっと音が鳴る。

 また目隠しをされ、多分オオサカという人に抱えられた。また意識を失ったのか、目を覚ました時には既に自分の部屋にいた。

 手首を見る。塞がってはいるが傷跡がくっきり残っている。

 まだ私は生きている。

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