始まりの詩

みなと劉

第1章 はじまり

第1話

桜が満開の春の日、美咲は新しい中学校の入学式に向かっていた。母に連れられて校門をくぐると、初めて見る校舎の大きさに圧倒されながらも、心の中には期待が膨らんでいた。「どんな友達ができるのかな?」と、少し不安も感じていたが、希望に満ちた気持ちが勝っていた。


式が終わり、クラスの発表が行われると、美咲は自分の名前が呼ばれるのを待ち構えていた。自分のクラスが決まり、名前を呼ばれた瞬間、心の中で小さくガッツポーズをした。クラスメートたちの顔が見え始める中で、明るい笑顔の男の子に目が留まった。その名は「悠斗」。彼は周りの子たちと楽しそうに話していて、まるで太陽のように輝いて見えた。


初めての教室に入ると、教壇の前には緊張した先生が立っていた。先生が自己紹介を始める中、美咲は悠斗の存在が気になって仕方がなかった。彼の笑い声が教室中に響き渡り、自然とクラス全体が和やかな雰囲気に包まれていく。


授業が始まり、隣の席に座った美咲は、悠斗が楽しそうに友達と話しているのを横目で見ながら、彼に近づく勇気が出せずにいた。しかし、授業が終わった瞬間、悠斗が美咲の方を見て笑いかけた。「ねぇ、何か面白い本読んでる?」その一言に、美咲は胸がドキドキした。


放課後、図書室で本を読んでいると、悠斗がふらりと入ってきた。彼は美咲の側に寄り、「一緒に読もうか?」と提案してくれた。美咲は驚きながらも、「うん、ぜひ!」と応じた。


悠斗と本を選びながら、彼の明るさに引き込まれていく。二人の間に自然と笑顔が生まれ、美咲はこの瞬間が永遠に続いてほしいと思った。彼との距離が近づくにつれて、彼女の心には少しずつ甘酸っぱい気持ちが芽生え始めていた。学校生活が始まったばかりの春、美咲の心には新たな恋の予感が訪れていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る