ひとり上手
藤間詩織
第1話 出生
あたしの父ちゃんを知らない。
母ちゃんは父ちゃんと別れた後にあたしを生んだと言った。
父ちゃんは今では北海道で中小企業を経営しており、異母兄弟の弟があたしにはいる。
でも、父ちゃんの遺産はあたしはうけとることができない。
母一人、子一人、仲良くやってきた。
ただ、あたしは容姿にもめぐまれなかったが、学もない。
高校中退した。
それから、池袋のサンシャインの東急ハンズや居酒屋でバイトして暮らした。
接客業は楽しかったから苦ではなかった。
ただ、東急ハンズでのバイトでは、人間関係で嫌な思いをした。
あたしがいいと思う男にはいかすけないかわいい女がくっつき、川嶋さんは醜い顔してるから、サンシャインの東急ハンズには向かないんじゃないの?といじめてくる女がたくさんいた。
その分、居酒屋のバイトは中国人の調理師やパキスタン人のウェートレスが親切にしてちやほやしてくれた。
毎日、楽しかった。
中国人の調理師とはデートまでしたが、なぜか、二回目のデートにつながらなかった。
パキスタン人のウェートレスはそれはそれはめぐみさんと持ち上げてくれて、ちやほやしてくれた。
気が付けば、四畳半のあたしのアパートにパキスタン人のウェートレス、シャーマンが住み着くようになり、やがてあたしたちは結婚をした。
長男長女次男の三人の子供たちに恵まれた。
ただ、幸せな結婚は続かなかった。
シャーマンがパキスタン人の女と不倫をしたのだ。
あたしは離婚を望んだ。
シャーマンは日本国籍、日本名が欲しいばかりに離婚に応じない。
それでも、あたしは耐えられなかった。
シャーマンが日本国籍、日本名を欲しいばかりにあたしと結婚したことが。
あたしは、今まで誰からも愛されていなかったのだ。
愛がほしい。
愛がほしい。
愛がほしい。
狂ったようにシャーマンと喧嘩の日々だった。
子育てなどどうでもよかった。
あたしは母親であることよりも女であることに執着していた。
しかし、シャーマンはパキスタンの女を取り、日本国籍も取り、日本名も取り、あたしを捨てた。
あたしは残された子供たちと生活保護で暮らしていくしかなかった。
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