ダークエルフの双子侯爵物語
府間東礼
第1話 双子侯爵
ルシエスタ帝国の最北ノルトクリッペ山岳地帯に、アイゼンツァーン侯爵領の侯都ヴァルクグラードはある。
険しい山裾から少ない平野部にかけて都市部が広がり、その周囲を頑強な城壁が取り囲み、城壁の上には近年になって開発されたばかりの最新兵器である大砲がずらりと並び、これもまた最近になって開発された鉄砲を持った兵士が巡回を行っている。
城壁から都市部へ目を向けると、よく整備された街路を人々と馬車が行き交い、商業区からは客を呼び込むために声を張り上げる店主たちの声が、工業区からは熱した鉄を打ち付ける音が響き渡る。
市街地を抜けると、第二城壁がありここが有事の際、この都市の最終防衛線となる為先程の第一城壁よりも堅牢に作られており、警備に当たる兵士の数も多い。主に第二城壁から先はアイゼンツァーン侯爵の私軍の施設や兵舎が多いのが特徴であり、練兵場ではこの春から正規に軍へ入隊することになる100人の若者たちが、教官のシゴキに耐えながら訓練を行っている。
主にこの区域は「駐屯地」と呼称され、市民の立ち入りは厳しく制限されている。立ち入りが許可されているのは主に許可を得た兵士たちの家族、物資を搬入する業者---これも特別に許可を得る必要がある---に限られており、普段城門が開かれることは滅多に無い。年に一度、アイゼンツァーン私軍と市民との交流の為に「駐屯地祭」と呼ばれる祭りの際には城門が開放され、市民たちは施設見学や訓練展示といった催し物を見学し、音楽隊による演奏や兵士たちの執銃動作演技などの披露に魅了される。余談ではあるが、麗しい女性方に人気なのは騎兵であり、アイゼンツァーン侯私軍特有の頂部が四角の形をした制帽(チャプカ)、金色の飾り糸が縫い付けられた肋骨服(ドルマン)、革で補強された足にフィットする乗馬ズボン、膝下まで長さがある黒色のブーツといった出で立ちは深窓の御令嬢や淑女の皆々様に大変人気であり、騎兵と同乗し演習場を一周する乗馬体験では行列ができるほどの盛況である。この光景を歩兵や砲兵たちは悔しそうに睨みつけて、野次を飛ばすというのが恒例行事になりつつある。
そして第三城壁を抜けると、これまでの物々しさとは打って変わりよく手入れがされたマナーハウスが見えてくる。このマナーハウスこそアイゼンツァーン侯爵の邸宅となる。この邸宅は元々は聖教の修道院であり、増改築を行った結果すっかり様相を変えてしまったが内装のところどころに当時の面影を残していた。
今日は来客がある為か、朝から使用人たちが忙しなく動き回り、どこか緊張感が漂っていた。しかし、使用人たちの気持ちを知ってか知らずか、アイゼンツァーン侯爵は執務室で呑気に隣国のデューリヒファーレン共和国で刊行されている魔法研究本に目を通していた。
長く尖った耳、不健康そうな青白い肌、赤く燃え上がるような瞳、糊がきいてよく手入れがされたアイゼンツァーン侯爵私軍特有の軍服に身を包むこの男性こそ、かつては肋小屋と小さな坑道しかなかったヴァルクグラードを帝国内の五指に入る大都市にまで発展させたダークエルフの侯爵ネストールその人である。
一方、ネストールの対面の椅子に腰を掛け同じように魔法研究本を読むこんでいる軍服姿のダークエルフの女性はネーヴナという名前であり、ネストールとは双子という関係である。彼女もまたダークエルフ特有のミステリアスな印象を抱かせる美貌の持ち主であり、多くの帝国貴族から求婚を受けた身ではあるが、その尽くを断ってきている。
ネストールとネーヴナという双子のダークエルフ。
二人の出自は帝国の上層部でも、帝室のメンバーしか知り得ておらず、このミステリアスな存在の噂話が帝国社交界の中で絶えることは無い。「初代皇帝を脅してその地位についた」、「実は帝室の私生児」、「ダークエルフ族の帝国侵略の為の手先」などなど、流言飛語が飛び交い帝国貴族たちからは距離を置かれているが、この双子が帝国を大いに発展させてきた功臣であり歴代皇帝の助言役を務めてきたことも相まって、何が真実なのかよくわからない。だがそこがいい。帝国貴族の淑女たちは今日も二人の噂話に花を咲かせ、お茶会を開くのである。
「しかし、理解できないものだな魔法と言うものは」
ネストールが急に喋りだしたので、ネーヴナは本に向けていた目線を上げてネストールを見る。
「いくら読み込んで実践しようとも、適正が無いものには扱えない。ましてや魔素という物が体内に共生していないと魔力すら発現しない。どこのミディクロリアンなんだ、っていう話だな」
「その話何回目だネストール」
ネーヴナは本を閉じ、傍に控えていた侍女が淹れた紅茶を口に含み、味を褒めてから次の言葉を発した。
「我らダークエルフという種族自体に、魔素が共生していないと三百年前に結論が出たじゃないか。まだ魔法を使えないことが未練なのか」
「そうではないネーヴナ。確かに我らダークエルフは、何の因果か魔素が体内に共生していないと結論が出た。だがそれを科学技術で補ってきたから、尚更魔法というものの利便さが理解できないだけだ」
確かに魔法というものは魔法術式、魔力、行使しようとする意志の力の三元素が重要でありどれか一つかけてしまうと発現がしなくなる。日常生活内でも魔法が使われおり、帝国内では魔法が使えない者はいないに等しい。
魔法術式を作成する技術も無く、魔力も持ち合わせず、魔法を行使しようとする意志の力も理解できないダークエルフ族はその代わりに奇天烈な発想で科学技術を発展させた。
そもそも魔法という概念自体がダークエルフ族には希薄であったのが一因であるとも考えられる。
ダークエルフ族は北西の果て、帝国では『新世界』と呼ばれる大陸に部族ごとに統治を行っており、各部族の代表者が議員として選出され、議会で討論を行いダークエルフ族の方針を定めていたため、一種の連邦国家としての体裁を保っていた。
『7つの国境、6つの共和国、5つの部族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家』という言葉こそ、ダークエルフたちの統治機構を絶妙に言い表せられるものは無い。
かつては部族間での武力闘争が激しかったダークエルフ族であったのだが、ある時に大陸が魔獣の大量発生という災厄に遭遇し、部族間での抗争どころでは無くなり、ましてやお互いを憎み合っている暇など無くなってしまったのである。ダークエルフ族という種族を残すためにも部族間抗争などという非生産的な行動は一切行われなくなり、百以上あった部族は統合再編を繰り返し五つのグループとなり得た。北部のスロヴァーン、東部のクロアディン、西部のダラ=マニン、南部のアルヴァゾ、中央部のセラブとして統合されて今日に至る。
五大部族はこぞって効率的に、なおかつ速やかに魔獣を殲滅できるように兵器の開発に力を注ぐようになり、発現までに時間がかかる魔法に見向きもしなくなっていった。
そしてダークエルフの歴史学者の間で、ダークエルフ族が魔法を使えない原因が「終わることのない魔獣との戦いの間で、先人たちは効率的に魔獣を殺すために制約がある魔法を捨て去り、技術発展に力を注いだ」という結論が出された。
これは半分正解であり、半分間違いであるというのはダークエルフならば誰もが知っていることであるが、自らが発展させた科学技術に絶大な自信を持つようになってしまい「そんなものか」と誰もが考えるようになった。
それに加えてダークエルフ族の遺伝子に刻まれてしまった「技術バカ」という因子は、もはや魔法という理論の証明が効かない得体のしれない物から目を逸らさせるには十分強力であり、魔法研究については見向きもされなくなってしまった。
ネストールとネーヴナの二人は故郷である『新世界』を飛び出して、ルシエスタ帝国の封臣として鉱山地帯を多く有するアイゼンツァーンの領地を任せられている為、故郷の学者たちが魔法が使えない理由について、新たな学説を提唱しているかどうかは知り得ないが、奇特な学者がいずれ結論を出すだろうと半ば諦めかけている。
「しかし見る分には良い。特に隣国の『聖女』が扱う神聖魔法とやらは、美しい。見た目はな」
ネストールは本を読み飽きたのか、乱雑に自分の執務机の上に投げ置き、それを見た執事が顔を青くする。「高価なものになんてことを…」という呟きが聞こえるが、聞こえなかったことにする。
「そして今日は何と年に一度の査察。一体何を見せれば良いんだろうな」
「お前の普段の政務に対する姿勢でも見せておけ」
ネーヴナも本を閉じ、傍に控えている侍女に預ける。侍女はいきなり本を渡され、手を震わせながら受取り、本棚にそっと戻した。
「今回の査察は誰が来るんだ」
ネストールは執事に確認をとり、第三皇女が査察にくるというのを聞くと苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。ネーヴナも同じ表情である。
「あのバリキャリの第三皇女か。成人して三年だったか」
執務室にいる使用人たちが「バリキャリ」という言葉に疑問符を浮かべる。ダークエルフ族独特の言いわましなのだろうか、と皆が考える。
「そうだ。他の皇子よりも政務が出来る余り、性格のキツさも相まって嫁の貰い手が禄に見つからないあの第三皇女だ」
ネーヴナの言葉に「なんて不敬なことを…」と呟く執事。これもまた聞こえないふりをする。
「おまけに技術研究費もアイツが政務を担ってから三割減だぞ。作りたいものも作れない」
「それは確かに言えるな。常備軍の維持費だけは死守したが、その分インフラへの投資額を削らざるを得なかった」
「こういうのを何て言ったかな。あのカスカベの奇天烈な五歳児がよく言ってた…」
「「妖怪ケチケチおばば」」
二人が口を揃えてその単語を発した途端、執務室の扉が大きな音を立てて勢いよく開かれた。扉の傍に立っていた警備兵は顔面を強打し、痛みのあまりに蹲った。
「全部聞こえてるわよ!誰が『妖怪ケチケチおばば』ですって?!」
執務室に入ってきたのはルシエスタ帝国第三皇女エレオノーラ。アイゼンツァーン侯爵領で作られた皇室専用の軍服に少々手を加えて華やかさが増しており、皇女自身の美貌も相まって美しく輝いて見える。だが、その美しい顔には微笑みではなく憤怒の表情を浮かべていた。
「黙って抜き打ちで来てみれば、随分な言い様ね?アイゼンツァーン双子侯爵」
「これはこれはエレオノーラ第三皇女殿下。ご機嫌麗しゅう」
「あなた達のせいで麗しくないわ!」
エレオノーラは敬礼を送るネストール・ネーヴナの双子に答礼し、プリプリと怒りながらネストールが座る執務机の対面に置いてあるソファに優雅な所作で腰掛けた。さすが妖怪ケチケチおばばでも皇族。どの所作はとても洗練されていた。
「あとまだ私は十八歳です!おばばなどと呼ばれる筋合いはありません!」
「怒るところはそこなのかい?」
ネーヴナが急な皇女の登場に対応しきれずあたふたしている侍女に変わって紅茶を淹れ、茶菓子を添えて差し出す。自分が飲む分もカップに入れて、手頃な椅子を持ってきてネストールの隣に座った。
「それで今日はどういった要件で?査察の為の書類なら、隣室に用意してあるが」
「すでに目を通しました。相変わらず分かりやすく、とても正確な内容で感服しました」
紅茶を飲みながらすでに書類には目を通したと答えるエレオノーラ皇女。さすがの仕事の速さにネストールも目を見開き、素直に感心する。
幼児の頃は泣きながら遊んでくれとせがんできたあのエレオノーラがねぇ。などと余計なことを考えつつもネストールは言葉を出す。
「今日はあなた達二人に相談したいことがあるのよ。皇女命令よ。拒否権は無いわ。黙って耳の穴かっぽじってよく聞きなさい」
軍隊ごっこで遊んでやった弊害がここで出たな。ネーヴナは付き人から口が悪いことを注意される皇女を見ながら、軍隊ごっこで遊んでやった時のことを回想していた。
「でもまずは人払いをお願い。二人にしか話せないの。ハンナは残っていいわよ」
ネストールはハンドサインで執務室から使用人たちに部屋から出るように促した。それを見た使用人たちは音を立てずに、いつでも飲めるようにと保温されているティーポットだけを置いて退室する。
部屋に残ったのはネストール・ネーヴナの双子、エレオノーラ第三皇女、その付き人の女官ハンナだけである。
「人払いありがとう。それで相談というのは…」
「「お断りします」」
「まだ何も言ってないわよ!」
エレオノーラは口を揃えて食い気味に拒否してきた双子を睨みつつ、紅茶を一口飲む。
「実はあなた達の領軍が保有する、鉄砲と大砲を近衛騎士団にも融通してほしいのよ」
さてさてどうしたものか。
ネストールとネーヴナの双子はダークエルフ的頭脳をフル回転させて思考する。
近衛騎士団とは帝室私軍と言っても差し支えがない、帝室の為に結成された精鋭部隊である。その任務内容は宮城の警護から始まり、帝室の護衛や帝都の防衛まで担っており、帝国臣民たちの憧れの的である。どの領軍との御前試合でも圧倒的な力で相手を捻じ伏せ、帝国に使える兵士たちの目指すべき目標である。
だその装備は、ネストールとネーヴナから言わせると時代遅れも甚だしい。フルプレートアーマーと無駄に長い長槍を持った騎兵隊、機動力が無い重装歩兵隊、個人の技量が物を言う長弓隊、魔法を行使する魔道士部隊の4つの部隊で構成されており、ダークエルフたちが五百年も前に通った技術水準であった。
過去にネストールとネーヴナが『新世界』から流れ着いた頃、弩(クロスボウ)を手土産に当時は一地方の男爵領だったルシエスタに仕えると、ルシエスタ領内は荒れに荒れた。男爵から工房の親方連中まで、上から下までの大騒ぎとなったのである。
このことから先進しすぎた技術---当時としても弩(クロスボウ)はダークエルフ族にとって時代遅れの兵器だったが---は余計な混乱を齎す、ということを学習した双子は「発展させてもフリントロック式の銃、前装式の大砲までにしよう」と心に誓った。
それでもまだまだ魔法に頼り切りな文明社会である為、鉄砲と大砲の時点で十分オーバーテクノロジーであることは間違いないので、鉄砲と大砲はアイゼンツァーン侯爵領が独占しているのが現状である。
ようやくこの大陸では最新兵器、帝国の切り札として扱われ始めた鉄砲や大砲も周辺諸国に普及し始めているが、まだまだその運用方法は模索途中であり、金持ちの道楽の道具としての扱いを受けている。
「なぜ鉄砲と大砲を近衛騎士団に導入しようと?十分、周辺諸国の軍隊を粉砕できるだけの実力も持っているじゃないか」
ネストールが思考の海に潜っているのを見て、ネーヴナは代わりに皇女に問いかける。
「貴方達が疑問に思うのも当然よね。でも、近衛騎士団の連中が口を揃えて言うのよ。『アイゼンツァーン侯爵領軍とは戦っても勝てる見込みが無い』って。それって、近衛騎士団を保有する帝室からしてみれば、貴女達の領軍は脅威なのよ」
「それは私たちアイゼンツァーンに帝室への翻意があると思ってる、ってこと?」
そこまでは言っていない、とエレオノーラは否定する。帝国が一地方の領主だった頃から陰ながら帝室を支えてきたこの奇特なダークエルフの双子は、もはやルシエスタ帝室にとっては無くてはならない存在なのだ。謀反を起こすなど微塵も思っていないし、これっぽっちも疑っていない。
エレオノーラの言葉を借りるなら、確かに近衛騎士団には勝てる方法は無いに等しい。銃兵の密集隊形に突撃する重装歩兵など良い的でしかない。長弓兵なら確実に銃兵の密集隊形に対抗できるが、軽騎兵を中心に構成されているアイゼンツァーン軍の騎兵隊にとっては恰好の獲物である。では自慢の重装騎兵で踏み潰してやろうとしても、歩兵は方陣---二列または三列で正方形を組む陣形。前列は片膝を付き後列は直立、三列目がある場合は二列目の兵士の間から銃兵が攻撃する。どの面から攻撃されても味方によって射角が阻まれることが少ないため、極めて高い防御力を発揮する陣形である---を組まれ突撃点が見出せなくなり、突撃中や離脱後に砲撃を受けせっかくの衝撃力が皆無になる。
「エリー。帝室直轄の軍が臣下の軍隊よりも弱いのが気に入らないの?」
ネーヴナはエレオノーラを愛称で呼んだ。
エレオノーラを愛称で呼ぶのは帝室のメンバーか、このダークエルフの双子だけ。己を愛称で呼んでくる時は大体、幼子を諭すようにこの双子は語りかけてくる。エレオノーラはそのことに多少むっとしながらも、素直に聞こうと無意識に姿勢を正した。
「確かに私たちの領軍は近衛騎士団よりも強力かもしれない。でもそれは、帝室からの、初代皇帝からの『魔獣の侵入を食い止める』という命令を遂行するため」
「我々アイゼンツァーンが何故ここに要塞都市を建設したか、知らないとは言わせないぞエリー」
ようやく思考の海から這い上がってきたネストールは、エレオノーラの目を見る。
そんなことわかっている、とエレオノーラは目で反論した。
かつては無縁だった『魔獣』という存在が昨今、大陸周辺の島々で確認され始めたこと。島の一つが完全に『魔獣』によって占領され、大陸侵攻への橋頭堡になり始めていること。そして侵攻が開始されて一番最初に到達するであろうと予測されるのが、ルシエスタ帝国であること。そして『魔獣』たちの上陸地点が、ここルシエスタ帝国の最北ノルトクリッペ山岳地帯、侯都ヴァルクグラードから山一つ越えた先の海岸であること。帝国は黙認しているが、『新世界』からのダークエルフ族のヴァルクグラードへの流入が増えていること。
ネストールとネーヴナが築いた帝国最大の防壁。
それは『魔獣』という、人間種族にとって新たなる脅威に対抗する為の手段であり、無闇矢鱈に周辺諸国に振りかざすべき力では無いのだ。
「だが我々と肩を並べて戦う、というのであれば検討はしよう」
「ネストール!」
ネーヴナは「こいつ正気か」とでも言いたげに、顔を顰めるがそんな双子の妹を意に介さずネストールは提案する。
「だがまずは、お前がケチった研究費を戻してくれ。それが戻らない限り、近衛騎士団向けの装備も手に入らないと考えてくれ」
「ですからケチってません!あれは、ネストール兄さまとネーヴナ姉さまが好き勝手する為のお金でしょう!お父様も言ってました。あのお金の大半は酒代だって!」
「そんなにケチケチするなエリー。あまり金に五月蝿いと行き遅れるぞ?」
「余計なお世話です!それに私は周辺諸国へ嫁いだ姉様たちと違って、好きに恋愛するんです!」
何言ってんだコイツ、とネストールとネーヴナは顔を見合わせる。
「大体私が良いお相手が見つけられないのも、貴方達のせいです!帝国の社交界で私が何て呼ばれているか御存知無いとは言わせませんよ」
「「妖怪ケチケチおばば?」」
「なんですってー!ムキィー!」
ルシエスタ帝国最北の守り手、ダークエルフのアイゼンツァーン双子侯爵。ネストールとネーヴナ。
二人はこんなやりとり、一体いつぶりだろうかと思いながらエレオノーラをからかう。
二人の脳裏に過るのは、故郷を飛び出して流れ着き初めて見た、美しい自然が広がるこの大陸の風景。
そして二人を拾い、生涯の友として共に歩み、ルシエスタ帝国の基盤を作り上げた旧ルシエスタ男爵ジョシュア。
彼と共に歩んだ日常が、二人には蘇ってきていた。
ダークエルフの双子侯爵物語 府間東礼 @IeeeeeeD
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