最弱冒険者の俺が史上最強の生物になった妹を介護しながらダンジョン攻略!! 〜妹よ、バズるのはほどほどにしてくれ〜
いくかいおう
C級:地元編
第1話 水泡に帰す!!
二〇年前、三人の魔王が生み出したとされる三つの
数多くの冒険者が挑んだものの、未だに最下層までたどり着いたものはいない。
険しいダンジョン故、遠征隊としてダンジョンに潜り、そのまま行方不明になったものも後を絶たなかった。俺の母さんも、その一人だ。
「お兄ちゃ〜ん」
俺と同じ黒い髪をした妹が、俺の背後に現れた。
いや、正確にはワープしてきた、が正しい。
俺はいま、地元の小さなダンジョン内にいる。
かれこれ一年は籠もっていた。
妹のプリナには、母さんが残したワープ魔道具を渡してあるため、同じダンジョン内ならどこからでも一瞬で俺の側に転移することができる。
「お疲れ様、お兄ちゃん。今日のお弁当だよ」
そう微笑む俺の天使。
丸っこい顔がとにかく可愛い。
身内贔屓を抜きにして、客観的に見て可愛い。
冷ややかな目で見ても可愛い。
たぶん全人類にアンケートを取ったら満場一致なんじゃないかな。
満場一致であれ。
満場一致だろうが絶対。
「あぁ、助かるよ。今日は何だ?」
「にんにくドカ盛り生姜焼き弁当にしました。お兄ちゃんの大好物だから」
「やったあ!! でも口臭が気になっちゃうかもなあ」
「そう思って口臭ケアキャンディーもあります」
「な、なんてできる妹なんだ……」
「うふふ、お兄ちゃんのためだもん」
カァー!!
なんて良い子なんだプリナは。
将来悪いやつに騙されないか心配になっちゃうよ!!
守護るしかねえ。
俺がプリナを、守護るしかねえ!!
「ところでどうだ? 外の様子は」
妹がステータス表示魔法を発動した。
空中に現れたステータス画面を、人差し指で操作していく。
「よくわからないけど、冒険者ギルドランク一位は相変わらず『インベーダーズ』みたいだね。前回の最難関遠征の配信は今でもすごい人気で、何万回も再生されてるよ」
「よし、そろそろ地上に出て、インベーダーズに入団しよう。三つの最難関クエストをクリアするために。母さんを、取り戻すために」
この一年で俺はかなり強くなった。
たぶん、世界で一番。
おそらく、史上最強。
とはいえ、一人で攻略できるほどダンジョンは甘くない。
険しい山登りと同じで、どうしてもそれなりの装備と人数が必要になるのだ。
「お兄ちゃんなら、きっとすぐに入れるよ。だって、ここでずっと鍛えてきたんだもん」
「あぁ、そうだな」
俺が修行の場所として選んだダンジョンは、地下一〇階までの小規模なものだ。
最深部のラスボスのレベルも低く、大したレアアイテムも出現しない。
だが、このダンジョンには俺とプリナしか知らない秘密があった。
最下層にいるボス、ゾンビドラゴンは倒されても半日も経てば復活する。
モンスターの復活自体は、どのダンジョンでも起こりうること。
肝心なのはそのゾンビドラゴンが、対象とのバトル回数に合わせてレベルがアップするのだ。
しかも、他のザコモンスターのレベルもアップする。
つまり、挑めば挑むほど攻略難易度が上がるダンジョンなのである。
俺と妹しか知らないのは、辺境のド田舎にあるマイナーダンジョンだから。
「その上で、俺は母さんが残した時間操作の魔道具を使って、このダンジョン内の時間の進みを操作した。外の一日が、ここでは一年。俺は無限に難易度が上がるダンジョンで、一三万三五九〇日籠もっていたことになる」
ちなみに、肉体年齢は反映されない。
ピチピチの一七歳のままだ。
やったぜ。
「拝ませてやるよ、俺の強さ」
「ほんと? 楽しみ!!」
プリナを連れて、薄暗く狭い洞窟を進む。
最深部にいる、巨大なゾンビドラゴンレベル9999万と対峙する。
「下がってろ、プリナ」
「う、うん」
剣を抜く。
緩やかに剣を振り上げ、
「ラス・スラッシュ!!」
斬撃を放ってゾンビドラゴンを塵に変えた。
「ま、手加減してもこんなもんさ」
「わぁ〜、すごいよお兄ちゃん。えーっと、お兄ちゃんのレベルは……」
プリナが右手を前にだす。
ハメられた指輪型の魔道具によって、ステータス画面を出現させた。
「999999……わわ、9がいっぱい。カンストしてる!!」
「もはや数字で測れやしないさ」
魔法でも画面は出せるのだが、魔道具であれば登録している人間のステータスも確認できるのだ。
なんなら通話もできる。音質は悪いけどね。
「これなら入団は絶対大丈夫だよ。だって、インベーダーズのリーダーだって、こんなにレベルは高くないはずだから」
「ふふ、そうだな。これからは『配信』もはじめていこう。金になるし、有名になった方が手っ取り早く入団できるはずだ」
「私もお手伝いするね」
最愛の妹が可愛らしく微笑む。
まさに天使だ。いつか彼氏を連れてきたらショック死する自信があるね。
一瞬で灰になって死ぬかもしれん。
「手伝うって、一緒に戦うのか?」
「えぇ!? そ、それは無理だよ……」
「はは、知ってる」
プリナは戦いとは無縁の女の子だ。
「今日みたいにお弁当とか作ったりする」
「ありがたいな。さて、さっそくプリナの手作り弁当でも食べるかな」
「お兄ちゃん、時間は大丈夫? 時間操作の魔道具には、デメリットがあるんでしょ?」
「わかってる」
一度発動すると、二度とは使えない。
加えて、実時間で一年以上使用し続けると、そこで培った『力やアイテム』を失ってしまうのだ。
そして、今日がそのタイムリミットギリギリ。
「一五時まであと三〇分だな。長かった修行も終わりだ」
「……うん!! あれ?」
「ん? どうした?」
「お兄ちゃんが魔道具を使ったの、一年前の一五時だったっけ?」
「おいおい、怖いこと言うなよ。ちゃんとメモってある」
懐からメモ帳を取り出す。
「ほらここに、一四時三〇分って……」
「…………いま、何時?」
俺の思考が止まった。
全身を悪寒が駆け巡る。
まるで大量の虫に這い回られているような感覚。
途端、俺の体がグンっと重くなった。
なんだ? 動きが、鈍い。
まさか……嘘だろ……。
急いでステータスを確認する。
【カルト・ボーマン レベル……1】
終わった。
最後の最後でやらかした。
俺の一年間の努力が、無駄になった。
ヤバい、泣きそうだ。
「お、お兄ちゃん」
「なんだ……」
「い、いま時間を確認しようと、ステータス画面を開いたの。そ、そしたらね」
プリナが珍しく青ざめている。
今度は何だというのだ。
妹の隣に立ち、画面を覗き込む。
【プリナ・ボーマン レベル……9999999999(測定不能)】
「え……」
「ど、どうしようお兄ちゃん!!」
こうして、俺は最弱冒険者に。
妹は史上最強の生物になってしまった。
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※あとがき
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