星月夜の囚人

あの日あの夜、ログハウスで見た星月夜が忘れずにいる。

暗闇で瞬く星の器、そこには半分と少し欠けた月模様の傷痕が。

数十分程度の感傷の後、心のパレットを覗き込む。

そこには鮮烈で、形容のできない美しいアイだけが。

ただ一色で十数年の時間をかけながら、作品に落とし込んだ。


その美しさは誰にも伝えられない。

言葉ではまだ足りていないようだ。

色調ではまだ伝わってないようだ。

軌跡ではまだ表せていないようだ。

旋律ではまだ描けていないようだ。


どうすれば、あの景色を甦らせるのか。

苦悩に時間を奪われ、挑戦に人生を翳められる。

幾つものモノを“黒”で染め上げてしまった。

誰もが欲するモノさえも手にせず壊してしまった。

ただ夢中で、熱中して、一心不乱で、耽溺している。


それは星月夜の囚われ人。

恒星の光で出来た窓と暗黒で出来た独房。

影さえも残らない陰の世界にある監獄。

瞬きに魅入られた罪深き人が住まう世界。

私はそこの囚人だ。

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詩集《独言》 月宮 和香 @hoshimiyawakou

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