第14話

「西野星来くんのおうちの方いらっしゃいますか?」


先生がなにかを言いかけたそのとき。処置室から出てきた看護師さんに声をかけられた。


「あ、おでこの傷の処置をするのかと。さっき準備ができたら呼びますからって看護師さんが言いに来られて」


あー、そういうことか。


「先生、お話の途中ですみませんが、行ってきます」


星来の手を引いて処置室へと向かった。


「失礼します」


中に入ると看護師がカーテンをササッと開けて丸椅子に座るように指示をした。星来を膝に抱っこして座ると、奥の方から白衣を着た長身の男性医師がやってきた。


切れ長で奥ぶたえの瞳がこちらに向けられると、ドクンと心臓が跳ね上がった。


なぜならば、重なった瞳の先にいるのは見覚えがある顔だったから。


清潔感漂う黒の短髪にすらりとモデルのように長い手足。きめ細やかな白く綺麗な肌。シャープな顎のラインに薄型の形のいい唇。あの頃のまま、変わらない姿の彼が目の前にいる。


向こうも一瞬だけ動揺を見せたが、すぐにふわりと笑ってなにごともなかったかのように目の前の席へとついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る