プロローグ~運命の人~

第1話

【プロローグ】


部屋のカーテンがゆらゆらと風で揺れている。少し解放した窓から、ほのかに舞い込む夜気が熱を帯びた肌を心地よく刺激する。


さく、好きだ」


「私も恭一郎きょういちろうさんのことが好きです」


曇りのない真っ直ぐなまなざしが降ってきて、私の唇を塞いだ。


初めて身を焦がすような恋をした。彼にならば、すべてを捧げてもいいと思えた。


鍛え上げられたしなやかな身体が私を温かく包み込む。身体に送り込まれる快楽に思わず甘い吐息が漏れた。


「ずっと俺のそばにいろ」


互いの足りないものを補うように何度も何度も身体を重ね合う。白いシーツの海に沈み欲情に溺れるふたりを、雲間から時折顔を覗かせる朧月だけが見ていた。


遠谷とおや恭一郎。彼は絶望の中にいた私を救ってくれた人であり、私の光。


彼が与えてくれた希望があるから私は今も生きていける。


たとえもう二度と彼と会うことができないとしても、私は彼の幸せを遠くから祈っている。


どうかどうか、彼が今も笑顔で過ごせていますように。

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