第4話 ケーキ

 合宿四日目、昼食の後のほっとした、そして少し気だるいひと時だった。他の部員たちは市営プールに水泳のトレーニングに出かけている。風見弘樹は先輩の安達英子に呼び出されて女子部屋の前にいた。


「入って」と英子は座敷の中から言った。


 弘樹は座卓しかない八畳の部屋にスリッパを脱いで上がった。


「そこに座って。今お茶を入れるから」弘樹は座卓の前に敷かれた茶色の座布団の上に胡坐をかいた。


 練習の疲れのせいで、このまま畳の上で寝てしまいたい、と思いながらぼんやりしていた。英子はお茶を卓に置くと、いきなり弘樹にのしかかってきた。


「えっ?」ぼんやりしていた弘樹は気がついたら仰向けに押し倒されていた。


「私のこと、嫌い?」大柄な英子は弘樹にのしかかりながら言った。


「嫌いじゃないけど、こんなこと……」と弘樹。


「弘樹、私のことを好きと言って」英子は鋭い目で弘樹を見た。「お願いだから、もう自分を抑えられないの。お願いだから、好きって言って。」


「もちろん先輩のことは好きです。でも……」と弘樹。


「それ以上は言わないで」英子は弘樹の顔を両手で押さえてキスをした。


 弘樹は抵抗をやめた。「弘樹、私の男になって、今だけでいいから、お願いだから」と英子。


 弘樹は目をそらしながら軽くうなずいた。


 英子はTシャツの下に手を入れて、スポーツブラを上にずらした。弘樹は組み敷かれたまま、茫然と英子を見上げていた。紺色のシャツの上から乳房の形がはっきりと分かった。英子は弘樹の手を取って、自分の乳房にあてがった。掌に生暖かい肌の感触があった。


 弘樹は顔が熱くなるのを感じた。「弘樹、私はもう準備できてるから」と英子がささやいた。


 弘樹の腰が自然に浮いた。英子はすばやく弘樹の短パンとトランクスを下にずらした。弘樹の硬いものが英子の腹にあたった。


 英子は弘樹の上半身を抑え込んだまま、器用に片手で自分の短パンと下着を片足だけ抜いた。英子は弘樹の下半身にまたがった。


「夢のよう……」と英子。




 事が終わると、英子は弘樹の首の下に手を入れて上半身を起こした。後ろから両手両足で抱きかかえて耳元でささやいた。「このことは誰にも言わないから、弘樹も言わないで。」


 弘樹は顔を真っ赤にしてコクリと頷いた。


「私のこと、嫌いになった?」と英子。


 弘樹は首を横に振った。


「よかった。本当に好きなのよ。弘樹のこと。でも安心して。絶対に人前で彼女面したりしないから」と英子。


 弘樹は頷いた。


「それから、これからも私の彼氏になって。ね、ときどきでいいから、いいでしょ?次からは無理やりしないから」と英子。


 弘樹はまた頷いた。


「よかった。それじゃあ、ケーキ食べようか」と英子は目じりを下げて笑った。

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