第28話 鬼哭島

 夕暮れ時、田熊が次の活動の計画を練っていると、ふと背後から鋭い視線を感じた。振り返ると、そこには一人の男が立っていた。その姿は、かの有名な漫画『北斗の拳』の南斗水鳥拳の使い手・レイを思わせる風貌だった。鋭い眼差し、鍛え抜かれた体、そして哀愁を漂わせる表情──一目でただ者ではないとわかる男だった。


「田熊…か?」低く響く声が静かな緊張感を生む。


 田熊はその場の空気に押されながらも、冷静さを保とうと努めた。「そうだが、君は誰だ?」


 男は薄く微笑み、「俺は、労働者の敵を討つためにこの地に来た者。お前の噂は聞いている…ブラックヴァルハラのリーダーとして、労働者たちを守るために闘っていると。俺もその道を歩む者として、お前の覚悟を確かめに来た」と言い、彼の目には鋭い決意が宿っていた。


「覚悟を確かめる?」田熊は少し驚きつつも、彼の真剣な瞳を見返した。


「そうだ。俺の名はれい」そう名乗ると、嶺はさらに言葉を続けた。「俺もかつては企業の手先として働いていたが、彼らの非情さと不正に耐えられなくなり、すべてを捨てた。そして今、同じ志を持つ者と手を組み、企業の闇を暴くために行動している。お前の力が本物か、共に闘える存在か、確かめさせてもらうぞ」


 田熊は微笑み、力強くうなずいた。「俺たちも覚悟はできている。ならば、共に闘おう。そして、労働者たちの未来のために、企業の闇を叩き潰そう」


 こうして、田熊の前に現れたレイに似た男・嶺が新たな仲間として加わり、ブラックヴァルハラの戦力はさらに強化されることとなった。


 数日後、田熊と嶺は「鬼哭島」と呼ばれる不気味な島に足を踏み入れた。その島は、かつて過酷な労働環境で働かされていた人々が命を落としたという伝説が残る場所で、長い間、誰も近づかない「呪われた島」として恐れられていた。しかし、最近になってその島である企業が秘密裏に活動を再開しているという情報が入り、田熊たちは真相を探るために島に向かうことを決意したのだった。


 鬼哭島に着くと、二人は島の荒れ果てた風景に言葉を失った。朽ちた建物、錆びついた機械、そして周囲に漂う不穏な気配。風が吹き抜けるたびに、亡霊のような声が耳元でささやいているように感じられる。


「ここで何が行われているのか、早急に突き止める必要があるな」と田熊が緊張を抑えながら言うと、嶺も静かにうなずいた。「俺たちがここに来たのは偶然じゃない。労働者たちが犠牲になった場所で、また同じ悲劇が繰り返されようとしているのなら、見過ごすわけにはいかない」


 二人は島の奥深くへと進み、廃墟の一つに入ると、驚くべき光景が広がっていた。内部は最新の機材が持ち込まれ、秘密裏に操業が行われていた形跡があった。監視カメラが至る所に設置され、警備員たちが巡回している。島はすでに企業によって要塞のように守られており、隠密行動が求められる状況だった。


「見つかれば命はないな…」嶺がつぶやいた。


「その覚悟はできている。ここで何が行われているかを暴き、犠牲になった人々の無念を晴らすんだ」と田熊は毅然と言い放った。


 二人は警戒しながらも、島の奥へと進んでいった。そして、ある巨大な施設の中で、数十人の労働者が強制的に働かされている現場を目撃する。目の前の光景に怒りを覚えた田熊と嶺は、互いにうなずき、行動を開始した。


「ここで終わりだ!」嶺が叫び、二人は労働者たちを解放するために戦いを挑む。警備員たちとの激しい攻防が始まり、田熊と嶺はその場で奮闘しながら、労働者たちに自由を取り戻させようと全力で立ち向かう。


 闘いが激しさを増す中、田熊と嶺はそれぞれが持つ信念を胸に、鬼哭島での最後の決戦に挑んでいた。




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ブラックヴァルハラ   10万 鷹山トシキ @1982

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